長守善

長 守善（ちょう もりよし）

長 守善は、1900年（明治33年）5月26日に愛媛県松山市で生まれ、1971年（昭和46年）6月8日にこの世を去った日本の経済学者です。中央大学で名誉教授の称号を受け、晩年は松商学園短期大学の第4代学長も務めました。

経歴と学問的歩み

愛媛県で育った長は、旧制第四高等学校を経て、東京帝国大学経済学部で高度な経済学を学びました。1926年に同学部を卒業後、大学院での研鑽を積んだ後、当時の満鉄調査部に勤務する経験を持ちます。また、学問へのさらなる探求のため、ドイツのベルリン大学への留学も果たしました。戦前からのこれらの経験は、その後の幅広い研究活動の基礎となったと考えられます。

終戦後、長は教育者としての道を本格的に歩み始めます。1948年には中央大学の教授に就任し、以降長年にわたり同学の研究教育を牽引しました。中央大学では、経済学部長や経済学研究所長（1964年-1966年）といった重要なポストを歴任し、学部の発展や研究活動の推進に貢献しました。

この中央大学在任中、長は活発な研究活動を展開し、その成果は多くの著作として結実しました。特に、1959年には「福祉国家イギリスの研究：その理念、形成、政策」と題する研究を一橋大学に提出し、経済学博士の学位を取得しました。これは、長の研究における一つの重要な節目であり、福祉国家論への深い造詣を示すものです。

幅広い研究領域と主な業績

長守善の研究領域は非常に広範にわたります。戦前のナチス経済やファシズム的統制経済に関する研究から始まり、戦後は欧米の社会主義や労働組合、アメリカ政治経済史、古典派経済学、経済政策論、経済学史、厚生経済学など、多岐にわたるテーマに取り組みました。それぞれの時代の経済状況や思想的潮流に対し、深い洞察に基づいた分析を展開しています。

その学術的業績は、単著だけでも20冊以上に及びます。代表的なものとしては、『ナチス ヒットラー：運動・思想・政策』（1933年）、『ファッショ的統制経済』（1934年）、『英国経済の衰頽過程』（1940年）といった戦前の著作から、『概説アメリカ政治経済史』（1947年）、『古典派経済学の理論体系』（1949年）、博士論文を基にした『福祉国家イギリス：その理念・形成・政策』（1959年）、そして中公新書から刊行された『マルク・フラン・ポンド：先進国を悩ます物価上昇』（1965年）などがあります。これらの著作は、当時の経済学界において重要な位置を占めました。

また、単著だけでなく、他の研究者との共著、編著、共編著においても、完全雇傭の理論、新古典派経済学、寡占と有効競争、戦後日本経済政策といったテーマに取り組んでいます。さらに、有名な経済学者の著作の翻訳も手掛けており、オーストリア学派のカール・メンガーやボェーム・バウェルク、近代経済学説史研究者のT.W.ハチスンなどの主要な著作を日本に紹介し、国内の経済学研究の発展にも貢献しました。

晩年と急逝

中央大学を退職して名誉教授となった後も、長の教育・研究への情熱は衰えませんでした。1970年（昭和45年）4月1日には、松商学園短期大学の第4代学長に迎えられました。学長として、短期大学を4年制大学に昇格させるという大きな目標の実現に向けた取り組みに着手しましたが、その矢先、志半ばの1971年（昭和46年）6月8日に急逝しました。

長守善の葬儀は、日本基督教団本郷中央教会で執り行われました。その多岐にわたる研究と教育への貢献は、日本の経済学史において重要な足跡を残しています。

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