長尾宇迦

長尾宇迦

長尾宇迦（ながお うか、1926年2月3日 - 2018年1月2日）は、昭和から平成にかけて活躍した日本の作家です。本名を豊といい、山口県にルーツを持ちながら、大連市で生まれました。國學院大學を卒業後、盛岡市の高校教師として教鞭を執る傍ら、同人誌『東北文脈』を主宰し、文筆活動をスタートさせます。

生涯と文学

長尾宇迦は、歴史小説を中心に、埋もれた人物や出来事に光を当てる作品を数多く発表しました。その作風は、綿密な取材と独自の解釈に基づき、人物の inner world を深く掘り下げ、読者に強い印象を与えます。1958年には「白い寒波」で岩手日報新聞小説賞を受賞、1964年には「山風記」で小説現代新人賞を受賞するなど、早くからその才能は高く評価されていました。

1971年に初の著書『山風記』を刊行後、精力的に執筆活動を展開。1987年には『幽霊記―小説・佐々木喜善』で直木賞候補となりました。この作品は、民話研究家・佐々木喜善を題材とし、遠野物語の世界観を小説として再構築したもので、長尾宇迦の代表作の一つとして知られています。

作品の特徴

長尾宇迦の作品は、歴史的事実に基づきながらも、作者独自の視点や解釈が加えられている点が特徴です。特に、東北地方の歴史や文化、風土を背景にした作品が多く、その土地に生きる人々の心情や葛藤を丹念に描き出しています。

また、長尾宇迦は、歴史に埋もれた人物、特に民衆の中に生きた名もなき人々に焦点を当てることが多く、彼らの生き様を通して、歴史の裏側にある真実を浮き彫りにしようと試みました。

主な著書

『山風記』講談社 1971
『野の人伝 1 岩手感慨集 1』万葉堂出版 1975
『鬼の棲む里』講談社 1978
『善知鳥の鼓』講談社 1980
『北上川愁色』講談社 1981
『風ささやく遠野』桐原書店 Rambling guide 1981
『ガンマン春秋 「野の人伝」シリーズ1』杜陵高速印刷出版部 1984
『つつじの園 「野の人伝」シリーズ2』杜陵高速印刷出版部 1984
『陣場台熱球譜 「野の人伝」シリーズ3』杜陵高速印刷出版部 1984
『雪のアスピーテ 「野の人伝」シリーズ4』杜陵高速印刷出版部 1984
『岩月おはら節 「野の人伝」シリーズ5』杜陵高速印刷出版部 1984
『幇間記』文藝春秋 1989
『籠の鳥 小説・鳥取春陽』文藝春秋 1993
『山峡絶唱 小説・西塔幸子』講談社 1996
『業句の海 小説・俳人下山逸蒼』読売新聞社 1997
『戊辰秘策 小説・輪王寺宮公現』新人物往来社 1998
『元禄津軽節』新人物往来社 1999
『西行法師北行抄』PHP文庫 2004
『津軽南朝秘聞』新人物往来社 2006
『幽霊記 小説『遠野物語』』新人物往来社,新人物文庫 2010


長尾宇迦は2018年1月2日に逝去されましたが、その作品は今も多くの読者に愛され、読み継がれています。歴史の陰に隠れた人々の声に耳を傾け、彼らの生き様を鮮やかに描き出した長尾宇迦の文学は、日本の歴史小説の新たな可能性を切り開いたと言えるでしょう。

もう一度検索