長崎会所調役

長崎会所調役とは

長崎会所調役は、江戸時代に長崎会所を統括する最高責任者として設けられた役職です。長崎会所は、海外との貿易を管理する重要な機関であり、その運営を円滑に行うために、会所調役は中心的な役割を果たしました。

役職の成立

この役職は、明和元年（1764年）に長崎奉行の石谷備後守清昌によって設置されました。当初、長崎の町年寄であった後藤惣左衛門貞栄が、その卓越した能力と実績を認められ、初代の会所調役に任命されました。後藤は、それまで町年寄の中でも上席とされ、この時、一代限りではありましたが帯刀も許可されるという特別待遇を受けました。

この役職設立の背景には、当時の長崎の地役人たちが、幕府や国益よりも長崎の利益を優先する傾向があったことへの懸念がありました。後藤惣左衛門は、銀の輸出を禁止し、反対に唐から銀を輸入するなど、国益を重視した政策を推進しました。また、オランダ人に輸出されていた小判を銅に代替させるなど、金銀の海外流出を抑制する策を講じました。これらの功績が認められ、後藤は会所調役という新たな役職に任命されるに至りました。

会所調役の職務

会所調役の主な職務は、長崎会所における貿易の監視・取り締まりです。唐やオランダとの貿易に関する問題が発生した場合は、速やかに奉行所に報告する義務がありました。また、町年寄と協議しながら諸事を進める必要がありましたが、地下の役人からの訴訟を取り扱うことはできませんでした。

会所調役は、町年寄よりも上席に位置づけられ、長崎の貿易を含む諸事を統括する役割を担いました。これにより、長崎奉行は会所調役を通して、役人たちへの様々な通達を伝達する体制が整えられました。ただし、会所調役には、市中の取り締まりや役人の任免権はなく、独断で物事を決定する権限もありませんでした。

役職の変遷

初代の会所調役である後藤惣左衛門が安永9年（1780年）に死去した後、この役職は一時的に空席となりました。その後、天明5年（1785年）に、町年寄の薬師寺藤左衛門種栄と久松善兵衛忠祗が任命され、以後、会所調役は町年寄2人が兼務する体制となりました。会所調役の創設を天明5年とする文献も存在しますが、これは初代の死後、一時的に役職が空席であったためであり、創設年は明和元年が正しいとされています。

会所調役の重要性

長崎会所調役は、長崎の貿易を円滑に進める上で非常に重要な役割を果たしました。貿易の監視・取り締まりだけでなく、国益を考慮した政策の推進や役人たちへの指示伝達など、多岐にわたる職務をこなす必要がありました。会所調役の存在は、長崎の貿易を安定させ、幕府の財政にも大きく貢献したと言えるでしょう。

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