長水丸

長水丸 (ちょうすいまる)

長水丸は、鉄道院から日本国有鉄道にかけて関門航路に在籍した鉄道連絡船です。この船は、同型船である豊山丸と共に、1920年12月4日に浦賀船渠で竣工され、同年12月27日に関門航路に就航しました。長水丸は、関門航路における旅客輸送の要求に応じて従来の門司丸よりも大型化されており、効率的な運用が行われました。

構造と特徴

長水丸の設計には多くの改良が施されています。その一つは、上甲板の前後に設置された手押し車室です。この設備により、手小荷物や郵便物を桟橋での積み替えなしに、手押し車に載せたままで乗船・下船が可能になり、荷物の積卸がスムーズになりました。この施策は、特に多くの利用者がいる時期においては大きな利点となりました。後にこの手押し車室は、自動車や自転車の輸送にも利用されました。

乗客用の客室については、手押し車室が上甲板を占めているため、客室は遊歩甲板の上に配置されました。この時期、下関と門司間の移動需要が高まっていたため、長水丸は貴賓室を右舷に設けたものの、客室の多くは3等室となり、2等室は廃止されました。これによって、多くの乗客が低価格で利用できるようになり、利用者に優しい設計となりました。

運用の変遷

長水丸は、1942年7月1日に関門トンネルが開通した際に鉄道車両渡船が廃止されると、近隣地域の住民向けに関門航路での運航を続けることとなりました。1946年5月1日には仁堀航路が開始され、これに伴い長水丸は仁方航路に転籍しましたが、1951年に関門航路に戻りました。その後、長水丸は1961年にダイヤ改正によって、関門・大島・宮島航路共通の予備船として活用されることとなります。

1964年10月には仁堀航路の五十鈴丸が検査に入ったため、代替として玉川丸が運航しました。これに伴い、長水丸も運航に加わり、同年10月31日の関門航路最終日にも積極的に運行されました。しかし、1964年11月1日をもって関門航路が廃止されるため、長水丸も遂にその運航を終了しました。

要目

長水丸の新造時における主要な要目は以下の通りです:

• - 総トン数: 410.0t
• - 全長: 121.0 ft (約35.0m)
• - 全幅: 28 ft
• - 航海速力: 10.0kt
• - 乗客定員: 749名（うち1等5名、3等744名）

このように長水丸は、当時のニーズに応えた大型の船として、関門航路で活躍した重要な存在でした。関門航路の歴史の一端を担ったこの船は、利用者にとってかけがえのない交通手段であったことでしょう。

参考文献

• - 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1965年1月号（通巻166号）
• - 升田嘉夫 関門航路63年の幕を閉ず
• - 青木栄一 関門鉄道連絡船の歩み

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