長沼修

長沼修：北海道のメディアと文化を支えた立役者

長沼修（ながぬま おさむ、1943年7月19日 - ）は、北海道放送（HBC）で長年にわたり要職を歴任し、その後札幌ドームの代表取締役社長を務めた、北海道を代表する実業家の一人です。彼の足跡は、北海道のメディア、エンターテインメント、そして地域社会に深く刻まれています。

生い立ちとHBC入社

長沼は北海道安平郡早来町（現・安平町）で生まれました。父親は北海道庁の農林技師であり、幼少期に札幌市西区琴似へ転居。母方の曽祖父は、明治初期に琴似へ入植した屯田兵でした。北海道札幌西高等学校、北海道大学農学部を経て、1967年にHBCへ入社します。

大学生時代にはオーケストラ部で活動しており、演奏会を開くたびにHBCの初代社長である阿部謙夫を招待していました。阿部は招待券ではなく当日券を購入して鑑賞していたそうで、その姿勢に感銘を受けた長沼はHBCへの入社を決意。当初は報道記者を志望していましたが、情報番組立ち上げの背景から制作部へ配属されます。しかし実際には、炭鉱事故の取材やドキュメンタリー、テレビドラマ制作など、多岐にわたる業務に携わりました。

テレビドラマ制作への情熱

1969年からテレビドラマの制作に携わるようになり、守分寿男に師事。『日曜劇場』(TBS系列)向けの単発ドラマ制作を通して、芸術性の高い作品や実験的な作品を数多く手がけました。田中絹代が出演し、日本のテレビドラマとして初めて小型ビデオカメラによるオールロケを敢行した『りんりんと』(1974年放送)や、倉本聰が脚本を手がけた『聖夜』(1973年放送)など、数々の話題作に携わります。倉本聰とはその後も10本ほどの作品を制作し、『うちのホンカン』シリーズでは、1981年放送の第5作と最終作を演出し、最終作は日本民間放送連盟賞で優秀賞を受賞しました。市川森一脚本の『バースディ・カード』(1977年放送)や『サハリンの薔薇』(1991年放送、文化庁芸術祭テレビドラマ部門芸術作品賞受賞)、金子成人脚本の『カラス係長奮闘記』シリーズ(1989-1992年放送)など、数々の名作ドラマを手がけ、HBCが制作した約200本のテレビドラマのおよそ半数に関わりました。

音楽番組とドキュメンタリー

オーケストラ部での経験を活かし、音楽番組のディレクターも担当。『ロッテ歌のアルバム』や『ゆく年くる年』(1976-1977年版)などで北海道内からの生中継を制作しました。スティービー・ワンダーの札幌公演ではプロモーションビデオを撮影、日本レコード大賞の審査員も務めました。1987年にはドキュメンタリー『童は見たり』を制作し、芸術祭テレビドキュメンタリー部門で芸術作品賞を受賞しています。

HBC経営への参画と札幌ドーム社長時代

1995年に社長室の経営企画部長へ異動し、本社屋の建て替え計画や地上デジタルテレビ放送（地デジ）への対応に奔走。1999年に常務取締役、2000年には社長に就任します。社長時代には、本社屋建て替え計画を凍結する一方で、日本民間放送連盟のデジタル特別委員として、北海道における民放の地デジ化を推進しました。リーマン・ショックによる業績悪化や視聴率低迷を受け、2009年に会長へ退き、2010年には札幌ドームの社長へ転身します。札幌ドームでは、エンターテインメントイベントの多様性を追求し、北海道日本ハムファイターズの本拠地移転問題にも尽力しました。2017年に札幌ドーム社長を退任し、旭日小綬章を受章しています。

長沼修は、放送人、経営者として北海道のメディアと文化に貢献しただけでなく、札幌ドームの社長として地域社会の活性化にも尽力しました。彼の多岐にわたる活動は、北海道の歴史に深く刻まれています。

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