長田忠致

長田忠致：義朝暗殺と頼朝の恩赦、そして悲劇の最期

長田忠致は、平安時代末期に活躍した武将です。生没年については諸説ありますが、1190年頃に没したと推測されています。桓武平氏良兼流に属し、平治の乱において重要な役割を果たしました。父は長田致俊、兄は長田親致、子には長田景致がいます。

長田氏は尾張国野間（現在の愛知県知多郡美浜町）を拠点としていました。平治元年（1159年）、平治の乱に敗れた源義朝は、東国への逃亡の途上で、忠致の元に身を寄せます。しかし、忠致と子の景致は、平家からの恩賞を狙い、義朝を騙し討ちし、その首を平清盛に差し出したのです。この卑劣な行為は、義朝の家臣、鎌田政清をも巻き込み、政清の妻である忠致の娘は悲嘆のあまり自害したと伝えられています。

忠致の兄である親致は、義朝暗殺を強く諫めていたとされますが、忠致の行動を止めることはできませんでした。親致はその後、故郷を離れ、愛知県碧南市に移り住んだと言われています。

義朝暗殺の功績により、忠致は壱岐守に任ぜられます。しかし、その地位に満足せず、左馬頭や尾張・美濃の国司への昇進を要求するなど、傲慢な態度が目立ちました。この行為は、平清盛らの怒りを買い、処罰されそうになったため、忠致は慌てて要求を取り下げたと言われています。

その後、源頼朝が挙兵すると、忠致は頼朝の軍に加わります。義朝の仇である忠致を、頼朝は寛大にも迎え入れ、「懸命に働けば美濃尾張を与える」と約束しました。忠致は約束通り、頼朝のために尽力します。しかし、平家を滅ぼし天下を掌握した頼朝は、忠致を義朝の仇として追及し、最終的に処刑するに至ります。処刑の際、頼朝は「約束通り、美濃尾張をくれてやる」と言い放ったと伝えられています。

忠致の処刑の場所や時期、そして処刑方法については、諸説あります。建久元年10月、頼朝の上洛の際に美濃で処刑されたとする説や、治承4年10月14日（1180年11月3日）の鉢田の合戦で戦死したとする説などがあります。また、処刑方法も、打ち首ではなく、土磔（つちはりつけ）による残虐なものであったという記録も残されています。処刑場の高札には、「嫌へども命のほどは壱岐（生）の守 身の終わり（美濃・尾張）をぞ今は賜わる」という皮肉な歌が書かれていたそうです。

忠致の死後、子孫は武田氏を頼って甲斐国へ逃れたという説があり、現在も山梨県に長田氏の子孫がいるとされています。また、徳川氏の譜代家臣である永井氏や長田氏も、忠致の兄・親致の子孫を称していると言われています。長田忠致の生涯は、権力と裏切り、そして悲劇に満ちた、波乱に満ちたものであったと言えるでしょう。彼の人生は、平安時代末期の動乱を象徴する出来事の一つとして、後世に語り継がれています。

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