長田裕之 (農芸化学者)

長田裕之の経歴と業績

概要

長田裕之（おさだ ひろゆき、1954年8月生まれ）は、日本の農芸化学者で、特にケミカルバイオロジーの研究で知られています。東京大学で農学博士号を取得し、理化学研究所や静岡県立大学で多くの役職を歴任し、さまざまな研究活動に従事してきました。彼は、特に天然物ケミカルバイオロジーに関する研究に注力し、多数の新しい化合物を発見しています。

生い立ちと学歴

長田氏は福島県白河市に生まれました。東京大学農学部の農芸化学科を卒業後、同大学院で博士課程を修了し、1983年には農学博士の学位を取得しました。在学中は「大腸菌におけるコリシンE2特異的プロテアーゼに関する研究」を行い、博士論文を執筆しました。

職歴

長田氏は1983年に理化学研究所に入所し、抗生物質研究室に配属されました。その後、主任研究員として多くのプロジェクトに参加し、2013年から2022年には環境資源科学研究センターでケミカルバイオロジー研究グループのグループディレクターを務めました。また、静岡県立大学薬学部の特任教授も兼任しています。更に、アメリカの国立がん研究所やフランスのルイ・パスツール大学でも客員教授として活躍しています。

研究活動

長田氏は、リベロマイシンAの研究をはじめとする多くの天然化合物の研究を通じて、微生物由来の新しい化合物を発見し、その生合成経路を解明してきました。彼は、化合物の標的分子の同定を行う手法であるケムプロテオベース（ChemProteoBase）や、形態変化を測定するモルフォベース（MorphoBase）を開発し、これらは新規化合物の発見において重要な役割を果たしています。

特に、リベロマイシンAに対する研究は顕著で、がん細胞に対する新たな抗がん剤候補としてのポテンシャルを引き出しています。この化合物の発見は、彼がアメリカに滞在していた際に着想を得た表皮細胞増殖因子の研究に根ざしています。リベロマイシンAの全合成の成功は、多くの研究者に刺激を与え、今なお多くのフォロワーを生んでいます。

技術開発と国際貢献

彼はまた、天然物ケミカルバイオロジー研究の進展を目指して理研天然化合物バンク（NPDepo）を設立しました。ここでは、研究者が利用できる化合物ライブラリーを提供し、創薬のスクリーニングを支援しています。さらに、韓国の研究機関との連携、フランスやマレーシアでの活動を通して国際的な研究ネットワークを築いています。

学会及び受賞歴

長田氏は、日本農芸化学会や日本がん分子標的治療学会など、多数の学会にて重要な役職を歴任しています。また、彼の研究業績は数々の賞を受賞し、その中には文部科学大臣賞やバイオインダストリー協会賞が含まれています。2021年には紫綬褒章を受賞しました。

結論

長田裕之氏の研究は、ケミカルバイオロジーにおいて重要な貢献を果たしており、彼の業績は日本だけでなく国際的にも高く評価されています。今後のさらなる発展が期待される分野において、彼の存在は非常に重要です。

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