長秋記

『長秋記』（ちょうしゅうき）は、平安時代後期の公卿である源師時（みなもとのもろとき）によって記された日記です。

書名について

この日記の名称は、源師時が「皇后宮権大夫（こうごうぐうごんのだいぶ）」の官位にあったことに由来します。「皇后宮」の唐名である「長秋宮」から「長秋記」と名付けられました。また、「権大夫記」「師時記」「水日記」といった別名も存在します。

概要

源師時は、有職故実（ゆうそくこじつ：朝廷や公家の儀式・制度に関する知識）に明るい人物として知られており、その日記である『長秋記』は、院政期の朝廷における儀式や典礼を研究する上で欠かせない重要な資料となっています。

当初は70巻ほどあったとされていますが、現存しているのはごく一部で、長治2年（1105年）から保延2年（1136年）までの期間の10数巻が確認されているのみです。

特に、長承3年（1134年）1月から2月にかけての鳥羽院と待賢門院による熊野参詣に同行した際の記録は、詳細で貴重な内容を含んでいます。参拝の様子から京都への帰洛に至るまでの記録は、当時の様子を知る上で非常に重要な情報源となっています。また、山伏の峰入りの様子や、僧侶への供養米の配分など、平安時代の神仏習合の一端を垣間見ることができます。さらに、参詣日程の調整など、内部事情に関する詳細な記述も多く含まれています。

『長秋記』は、単なる個人的な日記にとどまらず、当時の社会情勢や文化、宗教観などを知るための貴重な歴史資料として、高く評価されています。

参考文献

早稲田大学図書館総合書籍データベース「長秋記」

関連項目

冷泉家時雨亭文庫

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