源師時

源師時（みなもと の もろとき）

源師時（みなもとのもろとき）は、平安時代後期の公卿・歌人であり、村上源氏の流れを汲み、左大臣・源俊房の次男として生まれました。白河上皇と鳥羽上皇という二代の天皇からの厚い信任を受け、正三位権中納言にまで昇りつめましたが、父祖が達成した官位を超えることはありませんでした。彼の詳細な記録を記した日記『長秋記』は、院政初期の政治や社会情勢を知る上で欠かせない第一級の歴史資料として、今日でも非常に重要なものとされています。

生涯

源師時は、白河院政が始まった頃の寛治2年（1088年）に従五位下に叙せられ、官吏としてのキャリアをスタートさせました。寛治7年（1093年）には左兵衛佐に任じられ、武官としての道を歩み始めます。その後も、嘉保元年（1094年）に従五位上、永長元年（1096年）に正五位下、康和元年（1099年）に従四位下、そして康和4年（1102年）には従四位上へと順調に昇進を重ねました。

嘉承元年（1106年）には右近衛中将に任命され、嘉承2年（1107年）には正四位下に昇進すると同時に、皇后である令子内親王（鳥羽天皇の准母）の皇后宮権亮を兼務することになります。しかし、永久元年（1113年）に発生した永久の変の影響もあり、その後の昇進は一時的に停滞します。保安2年（1121年）に父・俊房が亡くなった後、保安3年（1122年）には蔵人頭に任命され、同年12月には参議としてついに公卿の仲間入りを果たしました。

議政官としては、引き続き中将を務める傍ら、皇后宮権大夫として令子内親王に仕え続けました。その間、天治3年（1126年）には従三位に昇叙されています。この頃、序列が下の参議であった藤原為隆が中納言への昇進を望みましたが、師時がそれを阻止したという逸話も残っています。鳥羽院政の初期には、大治5年（1130年）に権中納言に昇進し、保延元年（1135年）には中納言としての功績により正三位に至りました。

保延2年（1136年）4月6日、源師時は出家し、その同日に60歳でこの世を去りました。最終的な官位は正三位権中納言兼太皇太后宮権大夫でした。

人物像と才能

源師時は、詩歌に秀でた才能を持っていました。和歌においては、『金葉和歌集』に5首が収録されているのをはじめ、計20首が勅撰[[和歌集]]に選ばれています。また、兄の師頼と共に『堀河百首』の詠み手の一人としても知られています。漢詩においても、兄ほどではありませんでしたが、師である大江匡房から「この君は、詩の心得て、よく作り給ふ」と賞賛されるほどでした。父・俊房から受け継いだ有職故実にも精通しており、源有仁らにその知識を教えたとされています。

また、作庭にも才能を発揮し、鳥羽殿の庭園造営にも携わったと伝えられています。日記『長秋記』は、当時の社会や宮廷の様子を詳細に記録した貴重な資料であり、その記録量は当時としては他に類を見ないほどだったと言われています。現存する『長秋記』は、長治2年（1105年）から保延2年（1136年）までの期間をカバーしています。

逸話

『今鏡』によると、源師時は6人から7人もの妻を持ち、毎晩のようにそれぞれの妻のもとを訪れていたとされています。また、それぞれの妻たちは互いに親しく交流していたと伝えられています。

官歴

以下は、『公卿補任』に基づく源師時の官歴です。

寛治2年（1088年）11月17日：従五位下
寛治7年（1093年）3月16日：左兵衛佐
嘉保元年（1094年）正月7日：従五位上
永長元年（1096年）正月11日：正五位下
承徳元年（1097年）正月：五位蔵人、正月29日：右近衛少将
承徳2年（1098年）正月27日：兼周防権介
康和元年（1099年）正月6日：従四位下
康和4年（1102年）3月20日：従四位上
康和5年（1103年）2月30日：兼備中権介
嘉承元年（1106年）3月11日：右近衛中将
嘉承2年（1107年）正月26日：播磨権介、3月8日：正四位下、12月5日：兼皇后宮権亮
天永元年（1110年）正月26日：兼備後権介
永久元年（1113年）正月19日：兼周防介
保安2年（1121年）11月13日：服解（父）
保安3年（1122年）正月23日：蔵人頭、12月17日：参議、12月21日：皇后宮権大夫
保安4年（1123年）正月22日：兼備中権守
天治3年（1126年）12月22日：従三位
大治5年（1130年）10月5日：権中納言
長承3年（1134年）3月19日：兼太皇太后宮権大夫
長承4年（1135年）正月28日：正三位
保延2年（1136年）4月6日：出家、薨去

系譜

父：源俊房
母：源基平の娘
妻：源師忠の娘
男子：源師仲
妻：官女某（中宮女房）
男子：源師清
妻：家女房
男子：源師行
妻：中務丞頼清の娘（または頼俊の娘）
男子：源師任
生母不明の子女
男子：源師基
男子：源師親

参考文献

竹鼻績『今鏡 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、1984年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
* 『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年

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