長船派

長船派の歴史と特徴

長船派（おさふねは）は、中世日本における刀工の一派であり、岡山県瀬戸内市の備前国邑久郡長船を拠点に活動していました。この流派は、五箇伝の一つである備前伝に属しており、数多くの名工と名刀を輩出しました。長船派が製作した刀剣は、その優れた品質から「長船物」（おさふねもの）として高く評価されています。また、一般的に「長船」や「備前長船」という通称でも知られています。

由来と初期の刀工

文献には、長船派の先祖として鎌倉時代の刀工である近忠と光忠の親子が挙げられています。特に光忠は名匠として知られているものの、その作には年紀作が残っていません。そのため、長光が作成した年紀作の中で、文永11年（1274年）という最古の制作年が確認されています。この長光の子または弟子にあたる景光や兼光は、同じく名工として名を馳せています。

さらに、南北朝時代には、兼光系の倫光・政光・基光などの刀工が正系を形成し、相州物からの影響を受けた長義系の刀工たち（長重・長義・兼長）や元重系（元重・重真）なども発展を遂げました。また、室町時代初期には、特に優れた名刀として知られる応永備前が作られ、盛光や康光といった刀工が活躍しています。

末備前の時代

室町時代以降、長船物は一括して末備前と分類されるようになり、則光・忠光・勝光・宗光・祐定・清光といった名工がその名を継いでいきました。ただし、同じ銘が入っている刀でも、実際には一門や門人がその名義を用いて制作することが多く、一種の集団制工房が形成されていたとされています。戦国時代になれば、刀剣の製作において「束刀」や「数打」と呼ばれる大量生産体制が採用され、多くの刀剣が生産されました。

刃文の特徴と技術

長船派の刀剣は、相州物の影響を受けた沸出来を持つものや、一部の末備前以外は、匂出来で地映の特徴が際立ちます。刀剣の刃文に関しては、鎌倉中期には丁子、末期には直刃に小互の目が見られ、南北朝時代にはのたれ、室町時代には複雑な互の目の乱れが顕著です。

近代の復興

昭和初期には、刀造りが一時途絶えたものの、戦後に岡山県の重要無形文化財保持者である今泉俊光により、美術品としての刀剣製作が復興されました。これは長船派の伝統を継承し、新たな形で文化を再興する重要な試みと言えます。

関連項目

長船派と比較される流派には、同じく備前国に起源を持つ鵜飼派がありますが、長船派から分派したという古説に対しては、作風の類似性が無いため異論が存在します。

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