長谷川一明

長谷川 一明（はせがわ かずあき）

日本の実業家であり、現在、西日本旅客鉄道株式会社（JR西日本）の代表取締役社長を務める人物である。三重県出身。

経歴

1981年に東京大学法学部を卒業後、旧日本国有鉄道に入社した。国鉄の分割民営化を経てJR西日本に入社。経営企画や営業部門での経験を積んだ後、主要な役職を歴任した。特に、2005年に発生したJR福知山線脱線事故発生時には、当時神戸支社の次長として、事故被害者への対応にあたる重責を担った経験を持つ。この時の経験は、後の安全に対する強い意識形成に大きく影響を与えたとされている。

その後、2008年には岡山支社長に就任。2012年には取締役兼常務執行役員として近畿統括本部の本部長を務め、地域の中核事業運営を担った。2016年6月には代表取締役副社長に昇格。この間、非運輸事業を担当する創造本部長を兼務し、奈良ホテルの子会社化や新たなブランドホテルの展開、三菱重工業の不動産子会社買収など、主に不動産事業を中心に事業領域の拡大や多角化を推進した。

2019年10月、当時の社長であった来島達夫氏から後任社長への就任を打診され、これを受諾。同年12月1日付で代表取締役社長に就任した。JR西日本では例年、社長交代は6月の定時株主総会に合わせて行われるのが通例であり、12月という時期の交代は異例と報じられた。

人物

私生活では、妻と2人の子を持つ。趣味は釣りである。座右の銘として「相互理解」と「敬意と共感」を挙げている。

インフラ産業を通じて国の発展を支えたいという思いから、旧国鉄への入社を志した。前任の来島社長は、長谷川氏を「切れ味と繊細さを併せ持つ人物」と評している。特に、JR福知山線脱線事故での経験を通じて、鉄道の安全確保に対する強い使命感を抱くようになった。社長就任後、初めての幹部訓示や記者会見の場で、彼は「基幹事業である鉄道の安全なくして、当社グループの成長はない」と述べ、安全への意識を全社に徹底する姿勢を示している。

主な出来事

2023年1月26日には、大雪の影響によりJR京都線や琵琶湖線で長時間の輸送障害が発生し、多数の乗客が列車内に閉じ込められるという重大なトラブルが発生した。これに対し、長谷川社長は記者会見で「重大な運行トラブルを発生させ、深くおわび申し上げる」と謝罪した。

この輸送障害発生当日、雪の予報を受けて設置された対策本部に出席していた長谷川社長は、他の役員と共に、現場への指示において厳しい口調を用いたことが後に明らかになった。この発言については、パワーハラスメントとは認定されなかったものの、JR西日本側は「再び輸送障害を起こしてはならないという緊迫した状況下で、厳しい口調になった」と説明し、社長自身もこの件について反省しており、再発防止に努めるとしている。

これらの経験を通じて、長谷川社長は安全運行の確保と、危機発生時の適切なリーダーシップ、そして社員とのコミュニケーションのあり方について、継続的な改善を図る必要性を認識している。

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