長谷川時夫

長谷川時夫：音楽と東洋文化の探求者

長谷川時夫氏は、1948年生まれの日本の音楽家であり、新潟県十日町市にあるミティラー美術館の館長を務めています。浅草の旧家に生まれた彼は、音楽家としてだけでなく、環境保護活動家、そして東洋文化の普及者としても多岐にわたる活動を展開しています。

タージ・マハル旅行団での革新的な音楽

1969年、21歳の時に前衛音楽グループ「タージ・マハル旅行団」に参加。ロック、ジャズ、前衛音楽の融合を試み、仏教音楽の要素を取り入れた東洋的な音楽を追求しました。ボーカルの他、トーキタイコ、ケヤキタイコ、尺八、琵琶などの演奏を担当し、1971年からのヨーロッパツアーでは、即興演奏と自然音を取り入れた演奏で各地で高い評価を得ました。

ヨーロッパでの経験は、彼の思想に大きな影響を与え、「自分のまわりには常に風が吹き、人はその場所で月や太陽と共に生き、やがて生まれた土地に還る」という悟りのような意識を持つようになったと言います。そして、「月の美しい場所」を永住の地とすることを決意しました。

ミティラー美術館の設立と環境保護活動

1970年代末、新潟県十日町市大池に移住。過疎化が進む大池地区で、小学校の廃校に伴う再開発計画に反対し、環境保護運動を展開しました。池のコンクリート補強工事や、周囲の林のアスレチックコース建設などに反対し、池の環境調査報告書の提出や賛助会員の結成などの交渉の結果、開発計画は廃案となりました。廃校となった大池小学校の校舎は、彼の管理下に置かれ、住居兼美術館として活用されることになります。

1982年、インドの民芸画に触発され、蓮沼ミヨ子の協力を得てミティラー美術館を開館。インドの貧しい女性たちが描いた民芸画を展示し、そのコレクションは15000点に及んでいます。その後、中国の少数民族文化を紹介するなど、東洋文化の普及に尽力。インドの古典舞踊や音楽の分野では、多くのグループを日本に招聘し、全国ツアーを実現させました。これらの功績により、国際交流基金地域交流振興賞や日印交流年賞を受賞しています。

「流れ星を一晩7つ見る」活動と宇宙観

1980年代から1990年代にかけては、若者たちを対象にカルチャースクールを開き、東洋文化やコスモロジー哲学の普及活動を行いました。自身の誕生日である8月13日に極大となるペルセウス座流星群の観測を推奨し、著書「宇宙の森へようこそ」では、流星群の見物に関する珍しい話題を紹介しています。

中越地震からの復興と音楽活動の再開

2004年の中越地震では、ミティラー美術館が大きな被害を受けましたが、長谷川氏自身の重機操縦の腕前と、日頃の鍛錬による腕力によって、美術館は奇跡的に復興しました。2008年末には、長らく休止していた音楽活動を再開し、コンサート活動を展開しています。

長谷川時夫という人物

長谷川時夫氏の活動は、インドの民芸絵画をきっかけに、日本人が古くから継承してきた歴史的な風俗の心を伝えることにあります。それは、現代の物質文明社会とは異なる、古来からの精神文化への回帰を促すものです。彼は、東洋の知恵者として、自然や宇宙の話題を通じて、我々に忘れかけていた大切な価値観を思い出させてくれる存在と言えるでしょう。

彼の活動は、上代の東国における宇宙観や思想支配と共通する部分があり、東国の知識人の系譜を受け継ぐ存在とも言えます。長谷川時夫氏は、現代に生きる我々にとって、東の国の先生であり、遠い祖先でもあるかのような、不思議な魅力を放つ人物です。

著書

絵本 宇宙の森へようこそ
宇宙の森へようこそ

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