長野県史

長野県史：信濃の歴史を刻む大規模自治体史

『長野県史』は、長野県が昭和41年（1966年）から平成4年（1992年）にかけて、38巻70冊という膨大な規模で編纂・刊行した自治体史です。戦後の高度経済成長期、地方自治体の発展と歴史認識の高まりの中で、長野県独自の地方史編纂事業として、その歴史的意義は非常に大きいと言えます。

長い道のり：編纂事業の経緯

1960年代から始まった『長野県史』の編纂事業は、長野県議会での決議をきっかけに、社団法人「長野県史刊行会」の設立へと繋がりました。同刊行会は、戦後の自治体史編纂事業で蓄積された経験とノウハウを活かし、綿密な調査と資料収集を行いました。

編纂の順序としては、既に多くの史料が所在調査されていた近世史料編から開始されました。これは、史料の整理と検証を効率的に進めるための戦略的な判断と言えるでしょう。続いて、中世史編へと着手されました。中世史料に関しては、以前から編纂されていた『信濃史料』が網羅的な史料集成として活用されました。これは、既存の研究成果を最大限に活用し、重複作業を避けることで、編纂作業全体の効率化を図ったことを意味しています。

このように段階的なアプローチにより、長年に渡る地道な作業を経て、最終的に全38巻70冊という大規模な県史が完成しました。この成果は、関係者全体の並々ならぬ努力と情熱の結晶と言えるでしょう。

内容：信濃の歴史を多角的に解き明かす

『長野県史』は、単なる年表や出来事の羅列にとどまらない、信濃の歴史を多角的に考察した内容となっています。政治、経済、社会、文化など、多様な側面から歴史を分析し、長野県の発展過程を詳細に記述しています。

特に、近世から現代に至るまでの社会構造や生活様式の変遷、地域社会の形成と発展、文化の継承と創造といったテーマについては、豊富な史料に基づいて深く掘り下げた分析がなされています。これにより、長野県の歴史を単なる事実の提示にとどまらず、その背景にある社会構造や人々の生活、文化を理解することができます。

さらに、『長野県史』は、単なる歴史書に留まらず、現代社会を考える上での貴重な示唆も与えてくれます。歴史を学ぶことで、現代社会の問題を多角的に理解し、未来への展望を拓くことができるでしょう。

結論：地域史研究の金字塔

『長野県史』は、長野県の歴史を深く理解するために不可欠なだけでなく、戦後日本の地方史編纂事業の到達点としても高く評価されています。その大規模な事業規模、網羅的な内容、そして綿密な調査に基づいた記述は、後世の研究者にとっても貴重な資料となるでしょう。地方自治体による歴史編纂の成功例として、日本の地方史研究に大きな足跡を残したと言えます。 この大規模な事業は、単なる歴史資料の編纂にとどまらず、長野県民の郷土愛を育み、地域社会のアイデンティティを確立する上で重要な役割を果たしました。その成果は、今なお長野県の文化と歴史を継承する上で大きな意義を持ち続けています。

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