自治体史

自治体史とは

自治体史とは、日本における地方自治体、具体的には都道府県、市町村、特別区といった単位で、その地域の歴史を詳細に編纂した書籍のことです。日本で最初に編纂されたのは大阪市史であり、自治体史は地域ごとの歴史を深く理解するための重要な資料となっています。

概要

多くの地方自治体のウェブサイトでは、その地域の歴史を簡潔にまとめた年表が公開されています。しかし、自治体史は、現在の自治体が成立する以前の明治時代以前の地誌や史書も扱い、現在の自治体行政範囲内の歴史的出来事を包括的に扱います。これにより、地域が辿ってきた歴史的変遷をより深く理解することが可能になります。

自治体史の編纂と出版は、主に社会教育を担当する部署が担当します。完成した自治体史は、地元の書店や役場などで販売されるほか、地域の図書館や大学図書館にも所蔵されます。発行部数が少なく、ページ数も多いため高額になる傾向があり、複数冊で構成されることも珍しくありません。

編纂の特徴

都道府県レベルの自治体史では、地域史を専門とする歴史学者が編纂委員に迎えられます。彼らは時代や分野ごとに専門部会を設け、それぞれの専門知識を活かして執筆を担当します。構成としては、「史料編」として先史時代の考古資料から近代までの地域に関わる歴史資料を集成し、民俗や文化財に関する情報は別巻で扱われることが一般的です。史料集については、古代・中世の資料は網羅的に収録することが可能ですが、近世・近代期の資料は膨大なため、その中から重要と思われるものが選択的に収録されます。

編纂事業では、新たな史料を発掘するための調査や、その成果を紹介する専門誌の刊行が行われることもあります。これにより、新たな歴史的事実が発見されたり、従来の解釈を覆すような新説が登場することもあります。

利用上の注意点

自治体史は地域史の研究には不可欠な資料ですが、利用にあたってはいくつかの注意が必要です。特に、都道府県史レベルでは、担当した学者の独自の研究に基づいた記述が含まれている場合があります。また、「史料編」に収録されている史料も、自治体に関連する部分のみが抜粋されていたり、近現代の膨大な史料から選択的に収録されている場合があります。さらに、史料自体の解釈や釈文は担当した学者の見解に基づいているため、利用者はこれらの点を考慮する必要があります。

参考文献

自治体史に関する参考文献として、以下の書籍が挙げられます。

児玉幸多・林英夫編『市町村史等刊行の実務（地方史マニュアル10）』柏書房、1975年

この書籍は、自治体史の刊行に関する実務的な知識を提供しています。

関連情報

自治体史に関連する情報として、以下の資料やリンクが役立ちます。

地誌
風土記
自治体史を探す - 調べ方案内（国立国会図書館）

まとめ

自治体史は、各地域の歴史を深く理解するための貴重な資料です。編纂には多くの専門家と時間が必要とされますが、その成果は地域社会の歴史的アイデンティティを形成し、後世に伝える上で非常に重要な役割を果たします。利用者は、その特性を理解し、適切な方法で活用することが求められます。

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