長野重一

長野重一の生涯と業績

生い立ちと教育

長野重一（ながの しげいち）は、1925年3月30日に大分県で生まれました。彼は早くに実業家の長野善五郎夫妻の養子となり、東京の高輪へ移ります。東京に引っ越してからは、幼稚園や慶應義塾の教育機関で学び、1947年に慶應義塾大学経済学部を卒業しました。大学在学中に写真に興味を持ち始め、特にアマチュアサークルでの活動を通してそのキャリアを築いていきました。

写真家としての活動の始まり

彼の写真家としてのキャリアは、1946年にマミヤ光機製作所の懸賞に入選したことから始まります。その後、様々な写真展に参加し、徐々に評価を得ていきました。1947年に大学を卒業した後は、商社に就職しますが、数日でその仕事を辞め、写真に専念する道を選びます。彼はその後、週刊新聞の編集部に入社し、編集者としての経験を活かしていくことになります。

転機と編集者としての成長

『週刊サンニュース』に在籍中、長野は一度も撮影を行いませんでしたが、ある日、全カメラマンが不在になってしまったため、急遽撮影を任されることとなります。彼が撮った瀕死の老婆の写真は、当初は掲載される予定でしたが、雑誌の廃刊によりお蔵入りとなってしまいました。この経験が、彼にとってプロのカメラマンへの道を模索するきっかけとなりました。

フリーランスフォトグラファーとしての活動

1949年には岩波写真文庫の撮影スタッフとして参加し、約4年間にわたり、様々な地域の写真撮影を手掛けます。この期間中、彼は「鎌倉」「長崎」「広島」など、約60冊の撮影を担当し、その後も岩波書店の作品の写真を多数撮影しました。1954年にフリーランスとなってからは、社会派のルポルタージュを数多く発表し、一方で映画やCMのカメラマンとしても活動の幅を広げていきました。

映画業界での活躍

長野は、1960年代から映画カメラマンとしても知られるようになります。市川崑監督の映画「東京オリンピック」や人形劇映画に関わったことから、さまざまな映画作品に関与し、CM制作でも活躍しました。また、長野は1986年に個展「遠い視線」を開催し、再び写真の世界に戻りました。この作品群は後に顕彰され、長野の名声を不動のものにしました。

受賞と評価

長野重一の代表作「遠い視線」は、1986年度の伊奈信男賞を受賞しており、顕著な評価を得ています。1998年には、岩波書店のシリーズ『日本の写真家』の編集に携わるなど、写真家としての地位を確立しました。彼はその後も写真や映画、CMなど多岐にわたって活動を続け、2000年には東京都写真美術館で個展を開くなどし、死去するまで精力的な創作活動を展開しました。

長野重一は2019年1月30日に他界しましたが、その業績と影響は日本の写真の歴史において重要な位置を占めています。

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