門間英毅

門間 英毅

門間 英毅（もんま ひでき）氏は、1942年9月生まれの日本の化学者であり、工学博士号を持つ。専門は材料化学、特にアパタイトやセッコウをはじめとする無機材料の分野で、長年にわたりその研究と教育に深く携わってきた。工学院大学においては、マテリアル科学科の教授として多くの後進の指導にあたった。

キャリアの軌跡

門間氏のキャリアは、1967年4月に東京都立大学工学部助手補としてスタートした。翌1968年4月には同大学工学部助手となり、1986年9月まで約18年間にわたり教育・研究の基礎を築いた。この間、1986年10月から1987年3月にかけては同大学工学部の非常勤講師も務めている。

1976年8月からは科学技術庁無機材質研究所に移り、研究員として活動を開始。1979年10月には主任研究官、1991年4月には総合研究官へと昇任し、国の研究機関で主要な役割を担った。この無機材質研究所での勤務は1994年3月まで続いた。また、1990年5月から1991年3月にかけては、科学技術庁研究開発局総合研究課へ出向し、行政の立場からも研究開発に関わっている。無機材質研究所には、1994年6月から2001年3月まで客員研究官としても継続的に関与した。

1994年4月、門間氏は工学院大学に活躍の場を移し、工学部応用化学科の助教授に着任。翌1995年4月には教授に昇任し、以降、長きにわたり同大学で教育研究活動の中心を担った。後に工学部マテリアル科学科の教授となった。

研究機関との連携も継続しており、独立行政法人物質・材料研究機構（旧無機材質研究所）では、2001年7月から2006年3月まで客員研究官を務めている。

研究分野と主な貢献

門間氏の専門とする材料化学の中でも、特にリン酸カルシウム化合物であるアパタイトや、セッコウ、石灰などの無機材料に関する研究は特筆に値する。これらの材料は、生体材料、セメント、資源有効利用など、幅広い分野に応用される重要な素材である。氏の研究は、これらの材料の合成法、構造、反応性、応用に関する基礎から応用まで多岐にわたる。

具体的には、アパタイト系生体用セメント、多孔質アパタイト成形体の製造、欠損型アパタイトの新規反応・合成など、独創的な研究成果を多数生み出した。これらの成果は、医療分野における骨補填材料や、建材、環境材料など、様々な産業分野への応用可能性を示唆するものであり、社会的な貢献も大きい。

主要な受賞歴

長年の研究活動は高く評価されており、数々の著名な学術賞を受賞している。

1981年6月: 石膏石灰学会論文賞
1984年4月: 注目発明選定証「多孔質アパタイト成形体の製造法」
1987年4月: 市村賞貢献賞「多孔質アパタイト成形体の製造に関する研究」
1988年5月: 日本セラミックス協会学術賞「新しい水和凝結反応の基礎と応用に関する研究」
1990年4月: 科学技術庁長官賞「アパタイト系生体用セメントの研究」
1994年6月: 石膏石灰学会永井記念賞「電気化学的に析出させたアパタイトの形態とカルシウム欠損性」
1998年6月: 日本無機リン化学会学術賞「欠損型アパタイトの新規反応・合成に関する研究」
2000年8月: 日本セラミックス協会「20世紀のセラミックスを先導した12の論文」の一つに選定（H.Monma and T.Kanazawa, The Hydration of α-Tricalcium Phosphate, Yogyo-Kyokai-Shi, 84, 209(1976)）

これらの受賞歴は、氏の研究がいかに先駆的で、学術的および実用的な価値が高かったかを物語っている。

教育・啓蒙活動と著書

門間氏は研究活動に加え、教育者としても、また専門家として社会への情報発信においても精力的に活動した。多数の学会に所属し、学術論文誌の編集委員や支部活動を通じて、学術コミュニティの発展に貢献している。所属学会には、日本セラミックス協会、石膏石灰学会、無機マテリアル学会、日本無機リン化学会、日本アパタイト研究会、エコマテリアル研究会、フロンティアセラミックス研究会、日本バイオマテリアル学会などがある。

また、専門分野に関する多くの著書を執筆・監修しており、これらは材料化学、特に無機材料分野の教育や研究に携わる者にとって貴重な指針となっている。

主な著書として、以下のようなものがある（発行年順）。

石膏石灰ハンドブック (技報堂, 1972)
新実験化学講座・8 (丸善, 1977)
無機リン化学 (講談社, 1985)
石灰石の用途と特性 (石灰石鉱業協会, 1986)
バイオテクノロジー事典 (シーエムシー, 1986)
新素材レビュー'88 (シーエムシー, 1988)
セラミックデータブック'88 (工業製品技術協会, 1988)
Inorganic Phosphate Materials (講談社&Elsevier, 1988)
機能性セラミックス (日本ファインセラミックス協会, 1989)
エコマテリアルのすべて (日本実業出版社, 1994)
セラミックスの焼結 (内田老鶴圃, 1995)
セメント・セッコウ・石灰ハンドブック (無機マテリアル学会, 1996)
エコマテリアル事典 (サイエンスフォーラム, 1996)
セラミックス事典 (日本セラミックス協会, 1997)
自然融合材料 (化学工業日報社, 1997)
エコマテリアル学 (日科技連, 2002)
機能性セラミックス化学 (朝倉書店, 2004)
基礎からの無機化学 (朝倉書店, 2006)

これらの著書リストからも、氏の研究領域の広さと、学術知見を広く共有することへの熱意がうかがえる。

まとめ

門間英毅氏は、日本の材料化学分野、特に生体材料としても重要なアパタイトや、セメント、セッコウといった無機材料の研究において、基礎から応用まで幅広い貢献を果たした化学者である。長年の研究活動による多くの発見と、受賞歴に裏付けられたその業績は、この分野の発展に不可欠なものとなった。また、大学教授としての教育活動や、多数の著書を通じて、次世代の研究者育成と専門知識の普及にも尽力し、日本の材料化学の進歩に多大な影響を与えた人物と言える。

関連項目

アパタイト
セッコウ
* 工学院大学

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