閉塞性細気管支炎

閉塞性細気管支炎(BO)：ポップコーン肺とは？

閉塞性細気管支炎(BO)、別名「ポップコーン肺」は、肺の最も細い気道である細気管支の炎症によって気道が閉塞する、比較的稀な重篤な肺疾患です。初期症状は比較的軽微で、乾いた咳や息切れ、喘鳴などがみられますが、数週間から数ヶ月かけて徐々に悪化し、最終的には呼吸困難や全身的な衰弱を招きます。残念ながら、本疾患に対する効果的な治療法は確立されておらず、多くの患者さんが数ヶ月から数年で病状の進行により命を落とすという厳しい現実があります。

原因と発症メカニズム

BOの発症原因は多岐に渡ります。最も有力な原因の一つとして、有毒ガスの吸入が挙げられます。特に、化学物質の作業場での暴露や、特定の化学物質を含む粉塵を長期間にわたって吸入することで発症するリスクが高まります。その他にも、ウイルスや細菌による呼吸器感染症、自己免疫疾患である膠原病、さらには骨髄移植や心肺移植といった、重篤な手術後の合併症として発症することもあります。

興味深いことに、有毒ガスを吸入した場合でも、症状の発現には数週間から数ヶ月程度の潜伏期間があります。これは、炎症反応が徐々に進行し、細気管支に瘢痕（はんこん）が形成されるためです。この瘢痕化が、気道の閉塞を引き起こし、呼吸困難などの症状を招くのです。

症状

BOの初期症状は、乾いた咳、息切れ、喘鳴、疲労感など比較的軽微なものです。しかし、これらの症状は時間とともに徐々に悪化し、最終的には重度の呼吸困難、チアノーゼ（皮膚や粘膜が青紫色になる）、そして全身的な衰弱に繋がります。

診断

BOの診断には、いくつかの検査が必要です。胸部X線写真は、初期段階では正常な肺とほとんど変わりがないため、診断に役立ちません。そのため、高解像度CTスキャンによる画像診断が重要になります。CTスキャンでは、細気管支の閉塞や炎症による異常を詳細に観察することができます。また、肺機能検査を実施して、肺活量や気流の制限などの機能障害を評価することも不可欠です。必要に応じて、組織検査である肺生検を行う場合もあります。

治療

残念ながら、BOに対する根本的な治療法は未だ確立されていません。現在の治療法は、主に症状の進行を遅らせることに重点が置かれています。コルチコステロイドや免疫抑制薬といった薬物療法が用いられ、炎症反応を抑え、気道の閉塞の進行を抑制することを目指します。重症例では、肺移植が最終手段として検討される場合もありますが、成功率は高くありません。

予後と疫学

BOの予後は非常に悪く、ほとんどの患者さんが数ヶ月から数年で亡くなってしまうのが現状です。特に、肺移植や骨髄移植を受けた患者さんでは、発症率が著しく高まります。統計的には、肺移植後10年以内に約75％、骨髄移植後10年以内に約10％の患者さんがBOを発症すると言われています。この疾患が医学的に明確に解明されたのは1980年代ですが、より初期の1956年には既に関連する症例報告が存在していました。

まとめ

閉塞性細気管支炎は、重篤で予後不良な希少疾患です。早期診断と適切な治療が不可欠ですが、根本的な治療法がないため、症状の緩和とQOLの維持に努めることが重要です。患者さんやご家族への適切なサポート体制の構築も喫緊の課題と言えるでしょう。

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