関東取締出役

関東取締出役の概要

関東取締出役（かんとうとりしまりしゅつやく）は、江戸時代の江戸幕府で設けられた役職で、勘定奉行の配下に位置していました。この役職は文化2年（1805年）に設置され、一般的には八州廻り（はっしゅうまわり）や八州取締役とも呼ばれるものです。関東取締出役は、上野、下野、常陸、上総、下総、安房、武蔵、相模を含む関八州地域における治安を維持するために設立されました。

歴史的背景

江戸時代後期には、無宿人や浪人が増加し治安が悪化していく中で、幕府直轄領や私領が各地に広がっていたため、広域の警察活動が難しい状況が続いていました。このような状況を受けて、文化2年に勘定奉行の指示により、関八州を巡回する警察機関が必要とされ、関東取締出役が設立されました。

役職の設置と運営

関東取締出役は、代官から選ばれた8名で構成され、彼らは巡回して無宿者や悪党の取り締まりを行いました。最初は8名で運営されていましたが、業務の増加に伴い、文政9年（1826年）には臨時出役を増員し、さらに文政10年（1827年）以降は定数が増加し、合計で34名に達することになります。

この職務には無宿者や博徒の逮捕だけでなく、経済的活動の監視やコレラ患者の調査なども含まれ、時代と共に役割が拡大していきました。また、天保の飢饉の際には穀物の買い占めを調査したりしました。

地域社会との関わり

関東取締出役は地元の地理や悪党の特徴を熟知した岡引（おかっぴき）を使い、広大な地域を効率的に巡回することができました。しかし、彼らの中には権威を持つ者もおり、不正行為が発覚し問題となるケースも少なくありませんでした。特に、天保10年（1839年）に発生した合戦場宿一件では、複数の関東取締出役が不正行為に関与しているとされ、結果的に処分を受けることになりました。

武士としての地位と影響

関東取締出役は足軽格という比較的低い身分ではあったものの、広範囲を扱う権限を持ち、実質的には大きな権勢を誇ったとされています。このため彼らは、時には過剰な権力を行使し、地方の人々から恐れられる存在にもなったことが確認されています。これに対して幕府は規則を厳格化し、権力の乱用を防ぐ措置を講じたりもしました。

廃止とその後

関東取締出役の廃止時期に関する具体的な記録は残っていませんが、慶応4年（1868年）には取締役の活動が停止され、その後、正式に廃止される流れとなりました。最後の関東取締出役である渋谷鷲郎は、幕末の戊辰戦争に参加する事になりました。

関連作品

関東取締出役はその歴史的背景から、多くのフィクションや文学作品の題材にもなっています。代表的なものとして、「八州廻り桑山十兵衛」や「あばれ八州御用旅」などがあります。これらは、江戸時代の治安維持に関する多様な視点を提供しており、当時の社会情勢を知る手がかりとなります。

関東取締出役が果たした役割は、江戸時代の治安維持や社会の安定に寄与した重要な存在でしたが、その権限の拡大や不正行為などが問題視され、結果的に歴史の評価や背景に大きな影響を及ぼしたと言えるでしょう。

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