関東学院大学ラグビー部大麻事件

関東学院大学ラグビー部大麻 事件

概要

2007年（平成19年）に日本の大学スポーツ界で発生した不祥事の一つ。神奈川県横浜市にキャンパスを置く関東学院大学のラグビー部に所属する複数の学生が、大麻草の栽培、所持、および使用に関与していたことが明らかになり、大学、ラグビー部、そして社会全体に大きな波紋を広げた。

事件発覚と経緯

事件は2007年 11月8日に表面化した。大学職員からの情報提供に基づき、神奈川県警察金沢警察署の捜査員が、大学ラグビー部の合宿所として使用されていたマンションの一室を捜索。その結果、当時ラグビー部に在籍していた学生2名が、自己使用を目的として大麻草を栽培していた事実が判明し、両名は大麻取締法違反容疑で現行犯逮捕された。

彼らは飲食店のクラブで大麻を吸引している人物を目撃したことがきっかけで興味を持ち、同年1月頃に大麻栽培に関するマニュアル本を購入。同年9月頃、ラグビー部の夏合宿終了後に、自室の押入れ内で大麻草の栽培を開始したという。逮捕時には16本の大麻草が発見された。驚くべきことに、逮捕された2名は、事件発覚のわずか4日前の11月4日に行われた関東大学ラグビーリーグ戦グループの優勝決定試合（対大東文化大学戦）にベンチ入りしていた選手だった。

捜査が進む中で、大麻の種子入手経路も明らかになった。逮捕されたうちの一人は、大麻の種子を高校時代の友人に購入させ、それを受け取らせるという行為を行っていた。この件に関連し、専修大学に通う学生1名も逮捕された。さらに、同年9月に行われたラグビー部の英国遠征の際に、現地で大麻の種子を購入し、国内に持ち込んでいたことも判明した。

当初、大学側が行った部員への聞き取り調査では、逮捕された2名以外の部員の関与は否定されていた。しかし、逮捕された2名が警察の取り調べに対し、他にも十数名のラグビー部員が大麻を使用したことがあると供述。これを受けて神奈川県警が関係が疑われる部員計12名に対し任意での事情聴取を行ったところ、そのほとんどが大麻の使用を認めたことが、同年12月3日に報じられた。これは、大学が学長を責任者とする対策委員会を設置し、ラグビー部内で薬物乱用防止の研修会を実施するなど、再発防止に向けた取り組みを進めていた矢先の出来事であった。

関係者への影響と処分

事件の社会的な影響は大きく、発生翌日の11月9日には、NHK教育テレビで再放送が予定されていた、当時の春口廣監督を取り上げたドキュメンタリー番組『知るを楽しむ』の最終回が、監督本人からの連絡と社会的反響の大きさを考慮し、急遽別の番組に差し替えられる事態となった。

大学およびラグビー部は、この事態に対し厳しい対応を迫られた。11月9日付で、逮捕された2名の学生はラグビー部を退部処分となった。また、ラグビー部は翌年3月末までの対外試合の出場自粛を決定。春口監督は3ヶ月間の活動停止処分を受け、部長は辞任した。

当初、春口監督は事件に関与していない部員には罪はないとし、残りの試合に出場させる方針を示していた。しかし、関東ラグビー協会会長がテレビ報道を見た上で「甘いのではないか」と指摘し、翌年3月末までの試合自粛を強く求めた。これを受け、関東学院大学は改めて試合の出場自粛を決定するとともに、関係者の処分を最終決定。さらに、既に獲得していた関東大学ラグビーリーグ戦の優勝旗・優勝盾を返上することとなった。

同年12月4日には、関東学院大学はラグビー部の当該年度の全ての活動を停止することを決定。1974年の就任以来、弱小だったチームを長年にわたり強豪に育て上げた功績を持つ春口監督は、「全てが自らの責任である」として監督を辞任した。監督は、部員数が増加する中で部員一人ひとりに目が行き届きにくくなった時期があり、悩んでいたこともあったとされるが、「来る者は拒まず」という方針で部員数の制限は行っていなかった。

その後の展開

事件に関与したとして書類送検されていたラグビー部員12名については、2007年 12月28日、横浜地方検察庁は不起訴処分としたことを処分を決定した。

関東学院大学ラグビー部大麻事件