関東軍特種演習

関東軍特種演習について

関東軍特種演習（かんとうぐんとくしゅえんしゅう）は、日本の関東軍が1941年に行った対ソ連軍への軍事演習を指します。この演習は、単なる訓練に留まらず、実際には開戦に向けた軍事的な準備を含むものでした。略称は「関特演」とされ、国内外の状況が大きく変わりつつある中で、その重要性が増していました。

1941年6月22日、独ソ戦が始まると、日本政府は7月2日の御前会議で「情勢ノ推移ニ伴フ帝国国策要綱」を採択します。この中で、独ソ戦が favorable に進むのであれば、武力をもって北方の問題を解決する方針を決定しました。この方針に基づき、関東軍は7月7日に大動員令を発令します。

動員の詳細

実際の動員は第1次と第2次に分かれて行われ、まず第1次動員として7月13日に約300の部隊が内地から動員されました。そして、16日には第2次動員が行われ、14個師団を中心に兵力が増強されました。これにより、関東軍はのべ74万人以上の兵力を確保し、戦時における兵力の大幅な充実が図られました。

当時、陸軍参謀本部はソ連開戦に必要な前提条件として、極東ソ連軍の兵力が半減することが必要だと考えていました。しかし、この期待は裏切られ、ソ連軍はその兵力を維持し続けました。また、同年7月には南部仏領インドシナへの進駐によって、日本とアメリカ、イギリス、オランダの緊張が高まります。この結果、日本政府は対ソ戦略を見直し、東南アジアへの進出を優先する南進論へと方針を変更しました。

異なる意見と確定した計画

関東軍の中でも様々な意見があり、田中新一作戦部長や有末二十班長らが対ソ戦を念頭においた提案を行いましたが、海軍側からは「対ソ開戦」という文言を削除するように要求され、結局は妥結に至りました。陸軍は当時の経済状況や物資の不足を理由に、対ソ開戦に向けた計画を見直さざるを得ませんでした。その結果、1941年8月9日には年内の対ソ開戦の可能性が断念されます。

演習の目的とその後

関東軍特種演習の目的は、単なる訓練ではなく、ソ連との戦争に備えるためのものでした。これにより、関東軍はさらに多くの兵力を整備しましたが、実際の対ソ戦の計画は後の戦争の展開によって変化し、満州の警備活動にとどまりました。後の歴史的評価として、関特演での動員が大東亜戦争の末期まで決戦に至らなかったことが指摘されています。

正式名称の混乱

関東軍特種演習の正式な名称には長い間混乱がありました。「関東軍特別演習」「関東軍特別大演習」など、様々な異なる名称が用いられていましたが、江口圭一の調査により正式には「関東軍特種演習」であることが確認されました。元々、演習は教育のために計画されていましたが、独ソ戦の発生に伴い、急遽対ソ戦の準備のための演習に転換された結果、この混乱が生じたと考えられています。

ソ連の視点と国際法

戦後、ソ連政府は関東軍特種演習を非難し、これを日ソ中立条約違反と主張しました。そのため、対日宣戦布告が中立条約が失効した後の1946年4月以前に行われたとしても、国際法上の問題はないとしました。このように、関東軍特種演習は単なる軍事演習以上の意味合いを持つ歴史的な出来事であったことが、多くの資料によって明らかにされています。

もう一度検索