南進論

南進論の概要

南進論（なんしんろん）とは、戦前の日本で提唱された対外政策に関する論考であり、「日本は東南アジアを中心とした南方地域への進出が必要である」という立場を取ります。この論は、朝鮮や満州など北方地域への進出を目指す北進論と対立しています。

起源

この理念は幕末にまで遡ることができ、佐久間象山などが推進した開国論にその根を持っています。開国論は、外国の影響を取り入れつつ、日本を植民地にすることから防ぐことを目的としていました。南進論は1880年代にはすでに提唱されており、日清戦争を通じて台湾を領有して以降、第一次世界大戦の後には南洋諸島の委任統治においても論じられました。特に支那事変の時期に主導されたことが特徴的です。

当初の南進論は日本の軍事的進出や領土拡張と直接結びつけられなかったものの、1930年代以降は「自存自衛」という理念と結びつき、武力による南進を目指す声が強まりました。この時期に「北守南進論」という別名もつけられました。

明治維新から世界恐慌勃発まで

南進論は横尾東作や田口卯吉、志賀重昂、菅沼貞風、竹越与三郎、福本日南といった民間の思想家らによって提唱されました。この論は自由貿易主義やアジア主義の流れを受け継ぎ、オセアニアや東南アジアへの貿易・移民事業の試みが行われました。日清戦争の際には台湾領有の具体的主張がありましたが、日清戦争および日露戦争後、日本の国策は主に朝鮮や満州、中国大陸方面、即ち北進論にシフトしたため、南進論は民間の対外政策としての位置付けに留まりました。

1914年の第一次世界大戦では、日本海軍がドイツ領ミクロネシアを占領し、この地域が日本の委任統治領になりました。これにより南洋群島は新たな進出の拠点として位置づけられ、南進に関する経済的かつ平和的なアプローチが再び注目を浴びました。1925年には、日本企業がインドネシアのスラバヤへの進出を試みました。

世界恐慌から第二次世界大戦まで

1930年代に入り満州事変など国際情勢の変化から、日本の国際的地位が脅かされる中で「南進」は国策の選択肢として浮上してきました。1936年の五相会議での公表されなかった重要国策の決定により、「東亜共栄圏」の構想が南方進出の方針として重要視されました。一方で、陸軍中心の北進論も存在しましたが、国際的な状況の変化に応じて南進論が優位に立つこととなります。

1940年、日本が日中戦争に深く関与していた頃、東南アジアへの武力進出が本格的に国策として決定されました。特にこの時期に日本は自国の危機的状況を打破すべく、オランダやフランスの植民地へ進出を計画しました。このような政策は陸軍により推進され、フランス領インドシナを最初の進出先にしました。その後の南部仏印への進駐が日米関係を悪化させ、最終的に戦争への突入を引き起こしました。

日本が南進で確保を目指した資源

南進論の背後には日本が必要とした資源の確保がありました。具体的には以下のような資源が挙げられます：

• - 中国大陸：小麦、綿花、石炭など
• - アメリカ領フィリピン：米、鉱物資源など
• - 仏領インドシナ：米、ゴム
• - その他、イギリス領ボルネオやオランダ領東インドなど、多岐にわたる農産物や鉱物が対象にされました。

このように南進論は日本の対外政策の中で重要な位置を占めていた一方で、戦争の激化につながる結果をもたらしました。その影響は、戦前から戦後にかけての日本の展望に大きな影響を与えました。

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