関税割当制

関税割当制とは

関税割当制（tariff-rate quota、TRQまたはTQ）は、国内製品の競争力を強化するために設計された通商政策です。この制度は、輸入品に対する2つの要素、すなわち「輸入割当制」と「関税」を組み合わせて運用されます。具体的には、関税割当制は、指定された品目について限定された数量の輸入を可能とし、適度な保護政策を提供します。

制度の仕組み

関税割当制度は、特定の量の輸入品に対しては無税または低税率の関税を適用し、消費者に対して低価格の輸入品を提供します。一方で、その量を超える輸入品には比較的高い関税率を適用し、国内生産者を保護します。これにより、国内市場の安定性と生産者の利益が両立されるのです。

世界的な背景

1995年に締結されたウルグアイ・ラウンド農業合意によって、世界貿易機関（WTO）は加盟国間での農業製品の貿易についてクオータの設定を禁止しました。しかし、関税割当制度については、特定国に不公平に適用しない場合に認められています。これにより、各国は関税割当制を利用して自国産業を支援することが可能とされています。

各国の実施例

アメリカ

2018年時点、アメリカでは特定の乳製品、牛肉、綿、グリーンオリーブなどに対して関税割当制が設けられています。過去には2002年に鉄鋼製品についてセーフガードを発動した際にも適用されましたが、現在は終了しています。

日本

日本においては、関税割当制度の対象とされる品目は1961年の制度導入以降、国内の産業情勢に応じて追加や廃止が行われてきました。1995年度のウルグアイ・ラウンドにおいて国際的に約束されたアクセス機会を確保する目的で、関税割当制の対象として新たに11品目15枠が追加され、その後も更新が続けられています。2018年度時点では、合計で19品目28枠が存在しています。この制度の根拠法は、関税定率法第9条の2であり、その詳細な規定も関連法令に基づいて明確化されています。

法的根拠

関税割当制の運用は、関税定率法や関税暫定措置法に則っています。具体的には、関税定率法第9条の2では、特定の数量の範囲内で税率が適用されることが示されています。また、関税暫定措置法第8条の5では、経済連携協定に基づく特例も定められています。

割当制度の特性

この制度では、需要量に基づく割当数が毎年度見直されます。例えば、国内需要の見込数量から国内生産見込数量を引いた数を基準に、国際市場の状況を考慮して割当数量が決まります。また、特定の品目については「抱き合わせ方式」と呼ばれる方法が導入されており、これは国産原料の引き取りを基にした割当を意味します。

経済連携協定による影響

日本が締結する経済連携協定（EPA）においても、関税割当制度が適用される品目があります。これにより、EPAに基づく関税の譲許が一定の数量まで獲得できる品目が存在します。具体的には、CPTPP協定や日EU協定、その他のEPAに関連する複数の品目があります。これらに対しては、国内法令に依存せず、協定に基づくルールが優先されます。

結論

関税割当制は、国内産業に対する保護政策と、輸入品の流通促進を両立させる重要な仕組みです。今後も国際的な取引環境の変化に伴って、柔軟な対応が求められるでしょう。

もう一度検索