関西大学短期大学部

関西大学短期大学部：戦後の高等教育と産業発展を背景とした短命な歴史

1950年4月1日、関西大学短期大学部は大阪府大阪市大淀区にて開学しました。しかし、その歴史はわずか9年。1959年3月30日に廃止されています。本稿では、この短期間ながらも存在感を示した短期大学部の歴史、教育内容、そして閉学に至った背景について、詳細に見ていきます。

教育内容と特色

関西大学短期大学部は、商業と工業の両面をカバーする「商工経営科」を唯一の学科として設置していました。昼間部と夜間部の両方が存在し、商業経営学、工業経営学、簿記会計といった専門科目の他、商業概論、財政学、工業数学、貿易英語、工場管理、設計製図といった幅広い科目が開講されていました。実践的なスキル習得を重視したカリキュラムが特徴的でした。

また、中学校教諭二級免許状（社会・職業）と高等学校教諭免許状（社会・商業）を取得できる教職課程も設置されており、教員養成の役割も担っていました。

開学の背景：戦後日本の高等教育と産業政策

関西大学短期大学部の設立は、戦後の日本の高等教育情勢と密接に関連しています。終戦直後の混乱期、政府は理工系教育を重視する政策を打ち出しました。関西大学もこの流れを受け、理工系学部の増設を計画していましたが、文科系学生の徴兵猶予廃止により文科系学部は縮小を余儀なくされました。

この状況下、関西大学は既存の施設を活用し、1944年には関西工業専門学校を開校。しかし、戦後の新制大学への移行において、この工業専門学校をそのまま工学部とする計画は、施設の不備により認められませんでした。そこで、暫定的な措置として短期大学部を設置したのです。これは、関西大学が工学部設立への布石として短期大学部を設立した、という見方もできます。

閉学の理由：時代の変化と工学部の設立

1950年代に入ると、日本の経済は高度成長期へと突入し、工業分野の技術者需要が急増しました。関西大学においても、工学部設立の要望が強まり、1958年には念願の工学部が開学しました。これにより、短期大学部の役割は終焉を迎え、1959年に廃止されることとなりました。短期大学部学生の募集は1955年を最後に停止されています。

キャンパスと施設

関西大学短期大学部は、天六学舎（天六キャンパス）を拠点としていました。このキャンパスは、戦前には関西大学専門部、戦後には関西大学第二部の各学部の所在地として使用され、長らく関西大学の生涯学習の拠点として活用されていましたが、2015年には売却されています。

まとめ

関西大学短期大学部は、戦後の高等教育制度の変遷と日本の高度経済成長という大きな時代の流れの中で、わずか9年間の歴史を刻みました。その存在は短期間でしたが、商業・工業分野の専門家を育成し、教員養成にも貢献した、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。また、関西大学が工学部設立を目指した過程における重要なステップであったことも、その歴史的意義を深く理解する上で欠かせません。 この短期大学部の存在は、戦後日本の高等教育と産業発展という大きな歴史的文脈の中で位置付けるべきでしょう。 多くの文献資料から、その設立と廃止の背景を探ることで、当時の社会情勢や高等教育制度の変容を理解することができる貴重な事例となっています。

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