闇の子供たち

闇の子供たち

『闇の子供たち』は、梁石日によって2002年に発表された小説です。タイを舞台に、貧困に苦しむ子供たちが人身売買や幼児売買春の犠牲となる姿を描き出しています。2004年には幻冬舎文庫版も発売され、2008年には阪本順治監督によって映画化もされました。

小説

この小説は、タイで行われている臓器移植を目的とした幼い子供たちの人身売買や、幼児売買春といった、目を背けたくなるような現実を描いた社会派作品です。ただし、内容はあくまでフィクションとして構成されています。

あらすじ

物語の舞台はタイ。8歳のヤイルーンは、両親によって売られ、貧しい山岳地帯からバンコクへと連れてこられます。両親は娘を売ったお金で冷蔵庫とテレビを手に入れます。ヤイルーンは売春宿で富裕層の大人たちの性的玩具にされ、1年後にはエイズを発症し、商品価値を失い、ゴミとして捨てられてしまいます。その2年後、今度は妹のセンラーが売春宿に売られていくという悲劇が繰り返されます。

タイに駐在する日本人新聞記者の南部浩行は、これらの事件を追いかける中で、闇に葬られた真実を暴こうと奔走します。

映画

2008年には映画版『闇の子供たち』が公開されました。江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡といった豪華キャストが出演し、話題を集めました。第43回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭に正式招待されるなど、海外からの評価も得ましたが、バンコク国際映画祭では、内容がタイのイメージを損なうとして上映中止となるなど、賛否両論を呼びました。

作品内容のフィクション性

映画公開当初、「幼児の人身売買、売春というショッキングな真実を描いたノンフィクション映画」と宣伝されたことで、観客からはノンフィクションとして受け止められることが多くありました。しかし、実際にはフィクションであり、タイ国内での不正な臓器移植は法的に不可能であることや、日本人への誤解を生むといった批判も上がりました。その後、宣伝素材から「ノンフィクション」の文字は削除されました。

本作に取材協力をした医師は、日本人がタイで心臓移植を受けた例はないこと、子供を殺してまで自分の子供を助けたいという両親はいないこと、不正な心臓移植はビジネスとして成立しえないことなどをフィクションとして挙げています。

バンコク国際映画祭での上映中止

バンコク国際映画祭では、児童買春に関する内容が問題視され、上映中止となりました。選考委員は当初、本作を高く評価していましたが、主催者側が開幕直前に上映中止を決定しました。監督の阪本順治は、タイ人の意見を聞きたかったとコメントしています。

撮影

撮影は困難を極めました。阪本監督は、過去に同様のテーマで撮影を試みたドイツの映画クルーが地元マフィアに襲われたという話を聞き、身の危険を感じながらもタイでのロケを敢行しました。また、児童虐待のシーンでは、子役への配慮を徹底し、精神的に追い詰められた阪本監督が一時的に失声症になるという出来事もありました。

『闇の子供たち』は、人間の欲望と貧困が生み出す闇を描いた、衝撃的な作品です。児童売買や臓器移植といったタブーに触れながら、人間の尊厳とは何かを問いかけます。フィクションでありながらも、現実社会の問題を深く考えさせられる作品として、多くの人々に衝撃を与えました。

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