阪急西宮スタジアム

阪急西宮スタジアム

阪急西宮スタジアム（はんきゅうにしのみやスタジアム）は、兵庫県西宮市にかつて存在した多目的スタジアムで、阪急電鉄が所有していました。1937年に開場され、特にその設計と設備は当時の野球場として革新的でした。

このスタジアムは、日本で初の二階席スタンドを有し、内外野は総天然芝で造られました。シカゴのリグレー・フィールドを模範にして設計されたため、観客席は本塁に向けて均一な傾斜が施されており、どの席からも良い視界が得られる工夫がされていました。初開場時の名称は阪急西宮球場でしたが、球団や運営が変化する中で1991年に「阪急西宮スタジアム」と改名されました。

スタジアムは「行きよい、見やすい」のキャッチフレーズで知られ、55,000人収容の広さを持ち、選手専用の充実した施設、男女別トイレ、郵便局、記者室なども完備され、開設当時としては最新の設備が揃っていました。設計を手掛けた阿部美樹志は、多くの阪急関連建物のデザインを担当したことでも知られています。

プロ野球黎明期には、阪急ブレーブスの本拠地として数多くの試合が開催され、他にもアメリカンフットボールや競輪、コンサートなども行われるなど、多彩な利用がされていました。競輪開催も行われ、特に西宮競輪場としても名を馳せました。

しかし、1991年にオリックスがフランチャイズを移転し、その結果、スケジュール上での公式戦が徐々に減少しました。次第にアメフトや競輪が中心となりましたが、老朽化や経営難により2002年に閉鎖が決定。その後、スタジアムは2005年に解体されました。

跡地再開発は進み、2008年には複合商業施設「阪急西宮ガーデンズ」が開業し、当時のスタジアムの名残を感じさせる施設も存在しています。跡地近くの踏切や交差点には「球場前踏切道」「球場橋」といった名称が残り、地域の記憶に刻まれています。

スコアボードは最初、手書きのパネル式から始まり、後に電光掲示版に更新され、試合の進行に合わせてさまざまな情報を提供していました。特に、1982年には関西の野球場で初めて大型の電光掲示装置が設置されました。

スタジアムの多機能性は、阪急電鉄の“多角経営”の先駆けとも言え、コンサートにはマイケル・ジャクソンやクイーン、サザンオールスターズなど多数のアーティストが出演しました。また、毎年行われていた「3000人の吹奏楽」など、大規模な地域イベントにも利用されました。これらのイベントは、地域に根ざした文化の一部となり、現在も語り継がれています。スタジアムの跡地は、今も多くの人々が訪れる場所となっており、歴史的な意義を有する空間であることは今も変わりません。

もう一度検索