阪神31形電車

阪神31形電車

阪神31形電車は、阪神電気鉄道がかつて保有していた路面電車車両です。国道線開業時に投入された1形の増備形として製造された低床式の路面電車であり、その改良型として登場しました。

概要

1形はモーターが2基しかなく、長距離走行には出力不足でした。また、北大阪線の501形は老朽化と輸送力不足が課題でした。そこで、国道線の輸送力増強と501形の置き換えのため、モーターを増設するなど改良した31形が投入されました。

31形は1929年から1930年にかけて20両が製造されました。外観は1形とほぼ同様ですが、モーターと電装品が大幅に変更されました。東芝製SE-116Dモーターを4基搭載し、制御装置も東洋電機製の直接式制御器を搭載しました。特に制御器は大型で、運転台の窓からはみ出すほどでした。モーター増設により、自重は18.6トンと1形より1トン重くなりました。

北大阪線に投入された車両は、複架線区間があったため、トロリーポールを前後に2基ずつ搭載していました。内装はロングシートが基本でしたが、日本車輌製造の5両は、バス路線との競合対策としてクロスシートを備えていました。これは、日本の路面電車では初の試みでした。

戦前の31形

1929年に製造された31 - 45号車は北大阪線に投入され、501形を置き換えました。翌年には31 - 35号車が国道線に転籍し、車輪のバックゲージを修正しました。1932年には北大阪線の線路もT型レールに交換され、仕様が統一されました。

1933年にはクロスシート車とロングシート車の番号が交換され、1935年には40番台が忌み番として欠番となり、41 - 50号車が81 - 90号車に改番されました。また、クロスシートはロングシートに改造され、捻出されたクロスシートは121形に転用されました。

その他、90号車には油圧カム軸式間接制御装置が試用され、ヘッドライトが固定式に変更されました。その後、31 - 35号車が再びダブルポール化され北大阪線運用に復帰し、36 - 40号車が国道線に残りました。戦時中には金属供出のため、ナンバープレートなどが取り外されました。

戦後の31形

戦後、北大阪線の架線が単架線化されたことに伴い、31形もシングルポールとなりました。出力に余裕のある31形は、国道線を中心に運用されるようになりました。塗色はベージュとマルーンのツートンカラーに変更され、社章とナンバーが記入されました。

1949年から1950年にかけてトロリーポールがYゲルに変更され、保護棒が復旧、尾灯が移設されました。1954年には火災で39号車が廃車となりました。

1967年と1968年には、81号車と31号車が制御器を油圧カム軸式間接制御装置に換装しました。1960年代後半から1970年代初めにかけて、38・40号車を除く全車が車体更新を受けました。トロリーレトリバーの位置が変更され、車体がノーリベットとなりました。

31形は国道線と北大阪線を中心に運用され、1974年の国道線一部区間廃止時に5両が廃車されました。残る14両は1975年の併用軌道線廃止まで運用され、最終日には装飾電車として起用されました。廃止とともに全車廃車となり、保存車両は存在しません。

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