防弾車

防弾車のすべて: 安全性と技術の融合

防弾車は、銃弾や爆発物から乗員を守るために設計された特殊車両です。高い安全性と、乗員を守るための高度な技術が凝縮された、まさに究極の移動空間と言えるでしょう。本稿では、防弾車の概要から性能、種類、用途、そして主要メーカーまで、多角的に解説します。

防弾車の概要

要人輸送などに用いられる防弾車は、外観をベース車両とほぼ同一に保つよう設計されています。そのため、防弾機能は車体の内部に施されることが多く、一見すると普通の車と見分けがつきません。しかし、その内部は、銃弾や爆発物から乗員を守るための様々な工夫が凝らされています。車体の強化に伴い重量増加は避けられず、走行性能は通常の車両に比べて低下する傾向にあります。

防弾性能のレベル

[防弾]]車の性能は、主に貫通する弾丸の種類によってレベル分けされています。民生用防弾車は、一般的に欧州標準化委員会]規格のEN規格、あるいはそれと同等のNIJ規格([[防弾ベストなどに使われる)で示されます。

EN-B7 (NIJ-IV): 7.62x51mm NATO弾などのフルサイズ小銃実包の徹甲弾頭にも耐えられますが、.50 BMGや14.5mmなどの対物ライフルや重機関銃の攻撃は防げません。国家元首クラスの要人向けに用いられる最高レベルの防弾性能です。
EN-B6 (NIJ-III): 7.62x51mm NATO弾など、フルサイズ小銃実包を用いた狙撃銃や自動小銃からの通常弾頭に耐えられます。政府高官や軍幹部、あるいは紛争地域での使用を想定したレベルです。
EN-B5: AK-47やM16などアサルトライフル、UZIなどのサブマシンガン、そして手榴弾の破片にも耐える性能です。
EN-B4 (NIJ-IIIA): 拳銃から発射される弾頭に耐えるレベルです。

民生用規格ではEN-B7が最高レベルですが、.50 BMGや14.5mm弾などの攻撃に耐える車両は、戦車などの装甲車両に分類され、防弾車の範疇を超えています。また、爆弾、特に地雷に対する防爆性能は防弾性能とは別個の概念であり、防弾性能が低い防弾車では防爆性能も低い場合があります。近年増加している、車体底部を攻撃するIED(即席爆発装置)に対処できる車両は限られています。

防弾車の種類

防弾車は大きく分けて3つの種類があります。

1. 防弾車として設計・製造されたもの
2. 通常車種の防弾仕様
3. 市販車を改造車メーカーが改造したもの

3番目の例として、日本ではスズキ・アルトを改造した軽自動車の防弾車(NIJ-IIIA)も存在しました。国際連合では、メーカーから市販車を購入し、国連の倉庫で改造することもあります。

防弾車の用途

防弾車は、軍用、警察用、要人輸送、貴重品輸送など、幅広い用途で使用されます。具体的には、

軍事行動
警察による暴動鎮圧や犯罪者逮捕
囚人護送
要人警護
貴重品輸送
治安の悪い地域での一般輸送

などが挙げられます。

防弾車の素材

防弾車の窓ガラスには、防弾ガラスが使用されます。日本の法律では、フロントガラスには合わせガラスを使用する必要があります。防弾ガラスは非常に重いため、ドアの防弾ガラスには強力なパワーウインドウレギュレーターが装備されています。ドアの防弾ガラスの昇降には、電動小型油圧ユニットが使用されることもあります。車体には、特殊鋼やアラミド系繊維などを樹脂成形したものが使用されます。

主要メーカー

ドイツの3大自動車メーカーは、公式に防弾車部門を擁しています。

メルセデス・ベンツ (Mercedes-Benz GUARD): 1965年から防弾車を製造しており、世界中で高い信頼を得ています。Sクラス、マイバッハ、Eクラス、Gクラスなどがベース車両として使用されます。
BMW (BMW High Security): 7シリーズ、5シリーズ、X5などをベース車両として使用しています。
* アウディ (Audi Security): A8、A6などをベース車両として使用しています。

これらの他にも、インカス社(米国)、キャラットドゥシャトレ社(ベルギー)、クラッセン社(ドイツ)など、多くの非公式ライセンス防弾車製造会社が存在し、車体の形状や内装は各メーカーによって異なります。

まとめ

防弾車は、高度な技術と素材を駆使して作られた、非常に特殊な車両です。その高い安全性は、要人の安全を守るだけでなく、紛争地域や治安の悪い地域での活動においても不可欠となっています。今後ますます高度化する脅威への対策として、防弾車の技術開発はさらに進展していくでしょう。

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