防空緑地

防空緑地とは

防空緑地（ぼうくうりょくち）は、1941年11月25日に防空法の改正により指定された、都市における防空目的のための緑地です。この緑地は、空襲による被害を軽減し、避難場所として、また火災の延焼を防ぐために設けられました。

歴史的背景

1930年代に入り、欧米諸国をはじめとする国家が、戦争に備えた防空対策を強化していく中、日本も例外ではありませんでした。特に1939年7月に内務省が策定した「防空土木一般指導要領」では、鉄道や公園、都市計画など広範囲にわたる防空対策が示されました。

この指導要領に基づき、都市計画では市街地を防火区画とし、広幅員道路や河川、公園などで区分することが求められました。このような都市計画は現代の防災都市計画にも通じる考え方です。

東京地方委員会は1940年に、防空を意識した都市の改造計画を検討し、その結果、東京防空都市計画が決定されました。さらに、全国的にこの計画を採用し、特に六大都市や北九州地域では公園の用地買収に対して国庫からの補助が始まりました。

防空緑地の整備

防空緑地は、空襲への備えを意図した緑地であり、当初は皇紀2600年の記念事業として計画されました。小規模な公園すら困難な状況の中、大規模な緑地を取り入れるために利用されました。その結果、わずか3年で公園や緑地の整備が進み、全国に96箇所の小緑地（合計483ヘクタール）、20箇所の大緑地（合計2117ヘクタール）が設けられました。

1941年には防空法の改正により、特定区域が空地として指定され、1942年には市街地には防空空地、周辺部には環状地帯が設けられました。1943年には東京と大阪において防空空地の正式な指定が発表され、東京では旧来の東京緑地計画を踏襲しつつ新たな内環状帯も設定されることとなりました。

戦後の防空緑地

戦後、防空法は廃止されましたが、その多くは1946年に制定された特別都市計画法に基づき緑地地域として指定され、都市の緑を保ちながら市街化を防ぐという意図が引き継がれました。多くの防空緑地は平和な公園へと姿を変え、東京都には砧公園や城北中央公園、さらには大阪府や名古屋市においても主要な公園として利用されています。

防空緑地同士を結ぶ疎開地帯は主に道路として利用されていますが、この政策は戦後復興計画にも反映されました。さまざまな交通インフラの整備と緑地の用途変更が進む中、緑地は徐々に減少し続けました。

1969年には、農地解放政策と住宅開発が進展したことにより、緑地地域が最終的に廃止されることとなりました。この過程で、戦前に設けられた防空緑地の役割は徐々に薄れ、都市の風景が大きく変化していきました。

結論

防空緑地は、日本の歴史の中で重要な役割を果たした緑地であり、空襲や火災から都市を守るための施策の一環として整備されました。その多くが現在の公園として生き残り、都市の緑化や防災の観点からも重要な資源となっています。

もう一度検索