防衛情報通信基盤

防衛情報通信基盤（DII）の概要

防衛情報通信基盤（DII: Defense Information Infrastructure）は、防衛省と自衛隊の主要な施設を結ぶ、超高速・大容量のネットワークです。従来、防衛庁と自衛隊のネットワークは個別に管理されていたため、相互運用性に課題がありました。この問題を解決するため、e-Japan戦略に基づき、2002年にDIIの運用が開始されました。

DIIの整備・運用は、当初は統合幕僚会議事務局が担当し、その後、統合幕僚監部指揮通信システム部と自衛隊サイバー防衛隊へと役割が移行しました。指揮通信システム部はネットワークの整備を、サイバー防衛隊は管理・運用を担当することで、効率的なシステム運用を実現しています。

DIIのシステム構成と特徴

DIIは、主に業務系システムを扱う「オープン系」(JIPNET-N)と、作戦系システムを扱う「クローズ系」(JIPNET-S)の2つのネットワークで構成されています。

ネットワーク構成:

フルコネクト型: 主要な駐屯地・基地が相互に接続され、東京都新宿区の市ヶ谷駐屯地を主局として通信が集中管理されています。
冗長化システム: 広島県呉市の海自呉基地に副主局（サブマスタ局）を設置。主局に障害が発生した場合でも、副主局に瞬時に切り替わることで通信を維持できます。
伝送技術: 光ファイバー、広域イーサネット、ATM、多重無線、衛星回線など、複数の技術を組み合わせた信頼性の高い伝送路を採用しています。
セキュリティ: オープン系はインターネットに接続しますが、クローズ系はインターネットとは接続せず、独立した秘匿回線を使用することで、機密情報の保護を徹底しています。

DIIの役割:

DIIは三自衛隊が共同利用する戦略レベルの基幹回線です。従来の音声通信中心のネットワークから、データ通信を重視したシステムへと進化しました。作戦レベル以下の通信については、DII以外にも、陸上自衛隊の方面隊電子交換システムや師団通信システムなど、各部隊の必要性に応じて独自のシステムが整備されています。

DIIの意義と将来

DIIは、防衛省・自衛隊の情報通信能力を飛躍的に向上させました。迅速・正確な情報伝達を可能にし、統合的な作戦遂行や、災害時の対応能力強化に大きく貢献しています。今後も、技術革新に対応したシステムの高度化、セキュリティ対策の強化が求められます。特に、サイバー攻撃への対策は、国家安全保障の観点からも重要な課題であり、継続的な改善と強化が不可欠です。また、AIやIoTといった新しい技術の活用も検討され、将来の防衛システムの更なる高度化に貢献していくことが期待されています。

まとめ

DIIは、日本の防衛力を支える重要な情報基盤です。その高度な技術と堅牢なセキュリティは、日本の安全保障にとって不可欠な要素となっています。今後ますます重要性を増す情報通信分野において、DIIは日本の防衛力の維持・向上に重要な役割を果たし続けるでしょう。

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