相互運用性

相互運用性とは

相互運用性（インターオペラビリティ）とは、異なるシステム、組織、または技術が連携し、情報やサービスを交換・利用できる能力のことです。この概念は、単に技術的な側面だけでなく、社会、政治、組織的な要因も考慮に入れる必要があり、広範囲にわたる分野で重要な意味を持ちます。

定義

IEEE（米国電気電子学会）は、相互運用性を「2つ以上のシステムまたはコンポーネントが情報を交換し、その情報を利用できる能力」と定義しています。電気通信分野では、システムや部隊が互いにサービスを提供し、受け、交換したサービスを通じて連携することで、作戦をより効果的に遂行できる能力とされています。

相互運用性は、情報やサービスを電子通信システムや機器の間で直接かつ円滑に交換できる状態を指し、その程度は特定の状況によって定義される必要があります。無線機においては、以下の3つの要素が重要です。

通信路の互換性（周波数、装置、信号）
無線システムの受信範囲と信号強度
* 拡張可能な収容能力

ソフトウェアにおいては、異なるプログラムが共通の交換形式、ファイル形式、プロトコルを利用してデータを交換できる能力を指します。相互運用性の欠如は、標準化への配慮不足から生じることがあり、特にコンピュータの世界では、標準に準拠しない部分において相互運用性が課題となります。

ISO/IEC 2382-01（情報技術用語集）では、相互運用性を「機能単位が、他の機能単位の特性に関する知識を持ち、情報を交換し、情報やサービスを相互利用できる能力」と定義しています。ここでいう「機能単位」には、プログラムだけでなく、ユーザーも含まれる点に注意が必要です。

技術的側面と組織的側面

相互運用性は、技術的な問題だけでなく、組織的な問題でもあるという指摘があります。相互運用性の実現は、関係機関に大きな影響を与え、データ共有の可否、従業員の訓練、使いやすさといった問題を引き起こす可能性があります。このような背景から、「ビジネスプロセスの相互運用性」(BPI) という概念も生まれています。

経済的影響

相互運用性は、ネットワーク外部性などの重要な経済的影響をもたらします。競合製品間で相互運用性が欠如している場合、独占や市場の失敗につながる可能性があります。そのため、利用者コミュニティや政府は、相互運用性を促進する措置を講じることが重要です。例えば、イギリスでは電子政府に基づいた相互運用性の取り組みであるe-GIFが存在します。また、第三者機関がビジネスプロセスの相互運用性のための標準を策定しています。

医療分野における相互運用性

医療分野では、技術革新のペースが加速しており、これらの技術を効果的に統合することで相乗効果が期待されています。特に、「プラグアンドプレイ」型の相互運用性、つまり医療機器を容易に組み合わせて使用できる能力への関心が高まっています。相互運用性は、患者がテクノロジーを最大限に活用するのを助け、業界での技術革新を促進します。

異なる製品を複雑なインターフェースなしに組み合わせることができれば、中小企業が専門的な製品を開発しやすくなります。相互運用性がない場合、病院は互換性のある機器を提供する大企業に依存せざるを得ません。相互運用性は競争を促進し、技術革新と品質向上につながります。

業界が相互運用性を達成する上で影響を与える要因として、以下の6つが挙げられます。

1. 相互運用性のある製品への需要
2. 相互運用性の定義となる標準と規則
3. 製造業者が相互運用性のある製品を開発する動機
4. 標準を解釈するためのガイドライン
5. 適合性の独立した検証
6. 積極的な相互運用性の推進

現状では、医療機器業界では相互運用性のあるシステムの開発はまだ途上段階です。病院での相互運用性への潜在的な市場はあるものの、製造業者が相互運用性を達成する動機はまだ低いのが現状です。たとえば、電子カルテ(EMR)の普及率は低く、多くの製造業者は相互運用性に投資せずに済んでいます。

治安分野における相互運用性

相互運用性は、警察、消防、救急医療などの公共安全に関わる分野でも非常に重要です。緊急事態が発生した際には、関係機関が連携して対応する必要があるためです。アメリカでは、従来、互換性のないシステムが使われており、情報交換が困難でした。政府機関の情報システムは「情報の孤島」状態であり、非効率な方法で連携を図る必要がありました。

これらの問題は、アメリカ同時多発テロ事件やハリケーン・カトリーナの際に顕著になりました。一部の州では、州全体のデータ共有ネットワークを構築するなどの進歩も見られましたが、連邦政府レベルでは相互運用性の欠如が課題となっています。国土安全保障省は、SAFECOM計画やCADIP計画を通じて、政府機関のCADシステムなどの統合を進めています。

相互運用性を達成するための手段

相互運用性を達成するためには、製品設計、業界とコミュニティの協調、技術と知的財産の利用可能性、標準の実装という4つの手段があります。

力と市場支配への疑問

相互運用性は、専門家にとっての問題と見なされがちですが、日常生活への影響は軽視できません。例えば、マイクロソフト対欧州委員会の事件では、相互運用性への懸念が力関係に関わる問題であることが示されました。欧州委員会は、マイクロソフトが市場での力を利用して、Windowsと非マイクロソフト製のサーバー間の相互運用性を制限していると指摘しました。

相互運用性に関する最近の取り組みとして、Microsoft Officeのファイル形式をECMAのOffice Open XMLに移行したり、パートナー企業と相互運用性に関する合意を結んだりする動きも見られます。

ソフトウェア特許に関する論争でも、相互運用性のために必要な技術に関する特許がRANDライセンス（合理的かつ公正なライセンス）の下に置かれるべきかという議論がされています。

まとめ

相互運用性は、さまざまな分野においてシステムや組織が連携し、より効率的かつ効果的に機能するための不可欠な要素です。技術的な側面だけでなく、組織的な側面や経済的な影響も考慮する必要があり、標準化や協調を通じて、その達成を目指していくことが重要です。

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