防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定

日米防衛特許協定：軍事技術の秘密保護に関する協定

日米防衛特許協定（正式名称：防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定）は、1956年（昭和31年）に日本とアメリカ合衆国が締結した軍事技術に関する重要な協定です。この協定は、両国間の防衛協力において、特許権や技術情報の交換を円滑に進めるための枠組みを提供するとともに、特に機密性の高い防衛関連技術の保護を目的としています。

協定の内容

協定は本文9条と議定書6項から構成され、主に米国の秘密特許制度と日本の特許制度の連携に関する規定を定めています。

協定の核心は、一方の国で防衛目的のために秘密にされた特許出願（秘密特許）を、他国でも同様に秘密扱いとする点にあります。特に、米国で秘密扱いにされた特許出願が、日本でも同様に秘密扱いとなる仕組みが確立されています。これは、軍事技術の漏洩を防ぎ、国家安全保障を維持する上で重要な役割を果たします。

具体的には、協定第3条において、一方の国が他国に提供した防衛関連の技術情報が、提供国で秘密にされている特許出願の内容に該当する場合、当該技術情報に関する特許出願は、受領国においても同様に秘密扱いとされることが定められています。

この協定の特筆すべき点は、議定書第3項で規定されている「協定出願」と「準協定出願」の概念です。

協定出願: 米国で秘密にされている特許出願と同一の発明に関する、米国出願人またはその承継人による日本での特許出願です。米国での秘密保持期間中は、日本での特許出願も公開されません。

準協定出願: 協定出願以外の特許出願であっても、協定出願の対象となった発明を公にする可能性のある出願は、米国での秘密保持期間中は日本でも公開されません。

これらの規定により、米国の秘密特許制度と日本の特許制度が連動し、防衛関連技術情報の漏洩を効果的に防止する仕組みが構築されています。日本の特許法には、協定出願や準協定出願を秘密にする旨の明示的な規定はありませんが、本協定に基づき、これらの出願は通常の出願公開の規定（出願から1年6ヶ月後に公開）の例外として扱われます。

協定の実施

本協定は、当初は実施のための詳細な手続細則が欠けており、事実上機能していませんでした。しかし、1988年（昭和63年）4月に、米国政府の要請を受けて手続細則が整備され、本格的な運用が開始されました。

類似協定

なお、米国は、オーストラリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、トルコ、イギリスなど、多数の国々と同様の協定を締結しています。これらの協定は、国際的な防衛協力における技術情報の秘密保護に重要な役割を果たしています。

まとめ

日米防衛特許協定は、日米間の防衛協力において、機密性の高い技術情報の保護と円滑な情報交換を両立させるための重要な枠組みです。この協定の存在は、両国の安全保障に貢献するだけでなく、国際的な防衛協力における技術情報の保護体制を強化する上で重要な意味を持っています。

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