阿倍比羅夫

阿部比羅夫について

阿部比羅夫（あべ の ひらふ、生没年不詳）は、7世紀中期に活躍した日本の将軍であり、その功績から歴史的な重要人物とされています。彼の氏姓は阿倍引田臣で、冠位は大錦上でした。比羅夫は越国守や後将軍、大宰帥といった地位を歴任しており、特に蝦夷征討と粛慎との戦いで名を馳せました。

出自について

阿部氏は古くから越および北陸道方面で活躍した豪族であり、阿倍引田臣はその一部族とされています。比羅夫の家系については二つの説が存在します。一つは、彼が阿部氏の中央豪族の一支族という説で、もう一つは越国の地方豪族であるという見解です。

歴史的文献によれば、比羅夫の父親がどのような人物であったかは不明ですが、一般的には阿部目であるとされることが多いです。一方、太田亮は彼の役職である越国守を根拠に、越国造家の一族である可能性を示唆しています。日本書紀に比羅夫の活動が記載される際には、当時の阿部氏の宗家が提出した資料に基づいているとされています。坂本太郎は、書紀の編纂時に宗家が引田氏を良く思っていなかったため、名前が省略されたと推考しています。

経歴

大化5年（649年）、阿部内麻呂が没したことで阿部氏の宗家が絶え、比羅夫は傍系出身にもかかわらず、阿部氏の中で最も有力な人物に成り上がったと考えられています。

蝦夷征討と粛慎討伐

斉明天皇4年（658年）から660年にかけて、比羅夫は越国守として蝦夷と粛慎の征討を行いました。日本書紀には彼の行動が記されており、いくつかの異論もありますが、基本的な流れは確認されています。

比羅夫は658年4月、船軍180隻を率いて蝦夷を討伐し、飽田および渟代の蝦夷を降伏させました。降伏した蝦夷の酋長には小乙上の冠位が与えられ、渟代や津軽の郡領に任命されました。また、有間浜では渡島の蝦夷を迎え入れ、饗応を行いました。同年7月には蝦夷200人が朝廷に出頭し、物資を献上する一方で饗応を受けました。

また、比羅夫は粛慎を打ち破り、ヒグマ2匹とヒグマの皮70枚を献上する結果を残しました。659年3月には再び蝦夷を討ち、241人と虜31人を饗応し、政所を設置して帰還しました。660年3月には再度粛慎を攻撃し、彼に攻められた蝦夷を救出しました。

白村江の戦い

斉明天皇6年、比羅夫は白村江の戦いにおいて、新羅に攻撃をかけたが、敗北を喫しました。この戦いにより、百済の再興は叶いませんでした。その後、天智天皇の新冠位制度の策定により大錦上に叙せられ、九州地方の防衛責任者に任命されたと考えられています。これにより、彼は国家の重要な防衛政策に関与することとなりました。

系譜

比羅夫の家族背景については不詳な点が多いものの、次男に阿部宿奈麻呂が、他にも子女がいることが分かっています。また、彼の名前は後の文化や作品にも影響を与えており、漫画「火の鳥」にも登場します。

彼の生涯は、日本の歴史の中でも重要な位置を占めており、今後も研究が続けられることでしょう。

もう一度検索