阿南共栄病院

阿南共栄病院の歴史

阿南共栄病院は、昭和初期の農村困窮の中、農民の保健と生活向上を目指して設立されました。1937年に開院した当初は、県内唯一の組合病院として、地域医療を支える重要な役割を担っていました。

開院から戦後の混乱期

開院当初、病院は名古屋医科大学の協力を得て、内科、外科、産婦人科、耳鼻咽喉科、レントゲン科（小児科、皮膚泌尿器科兼任）を擁し、農村医療の向上に尽力しました。しかし、日中戦争や太平洋戦争の影響で、経営は県信用購買販売利用組合連合会、さらには県農業会へと移管されました。戦後、徳島市内の病院が空襲で壊滅する中、阿南共栄病院は戦火を免れ、唯一の大病院として多くの患者を受け入れました。

1948年には、徳島県厚生農業協同組合連合会（厚生連）が設立され、阿南共栄病院は他の農業会病院と共に厚生連に引き継がれました。しかし、戦後処理の欠陥や施設基準整備の資金不足から経営問題が浮上し、労使紛争が発生しました。この紛争は半年にも及び、病院職員の総辞職や役員の全面交代など、大きな混乱を招きました。紛争後、病院は近隣住民からの不信感に悩まされながらも、徳島大学の協力を得て医局の充実を図り、経営を安定させました。

病院の近代化と地域医療への貢献

阿南共栄病院は、1966年に病院を全面改築し近代化を果たしました。その後も病棟の増設や増床を行い、総合病院としての機能も強化していきました。1963年には救急告示病院に指定され、地域医療における救急医療体制の充実にも貢献しました。また、高等看護学院を開院し、看護師の育成にも力を注ぎました。

阿南中央病院との統合へ

2000年代に入ると、阿南共栄病院と阿南医師会中央病院は、医師の高齢化と医師不足という共通の問題に直面しました。特に、医師会中央病院では輪番救急体制の維持が困難になり、地域医療の危機が深刻化しました。この状況を受け、2009年にJA徳島厚生連、阿南市医師会、阿南市は、地域医療体制の将来的な維持は困難であるとの認識のもと、両病院の連携策を協議しました。

協議の結果、両病院を統合し、新たな医療センターを設立する方針が決定しました。2013年には「医療センター設立に向けての覚書」が締結され、「建設委員会」が設置されました。2014年には医療センターの基本計画が策定され、2016年には阿南医師会中央病院の資産と経営権がJA徳島厚生連に譲渡されました。2019年4月30日、阿南共栄病院と阿南中央病院は共に閉院し、翌日の5月1日、両病院の機能を統合した阿南医療センターが開院しました。

阿南共栄病院の概要

病床数: 343床（一般病床）
診療科: 内科、消化器科、小児科、外科、肛門科、整形外科、脳神経外科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、形成外科、泌尿器科、放射線科、リハビリテーション科、麻酔科

関連項目

JA徳島厚生連の病院
阿南医療センター
吉野川医療センター
阿波病院
(旧)阿南中央病院
那賀川鉄橋空襲

阿南共栄病院は、その長い歴史の中で、幾多の困難を乗り越えながら、地域医療を支え続けてきました。その役割は、新たに開院した阿南医療センターに引き継がれ、これからも地域の人々の健康を支え続けていきます。

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