那賀川鉄橋空襲

那賀川鉄橋空襲

那賀川鉄橋空襲は、太平洋戦争末期の1945年7月30日に、徳島県那賀郡平島村（現在の阿南市那賀川町中島）で発生した悲劇です。アメリカ軍の艦上機が、牟岐線の那賀川鉄橋を走行中の列車を襲撃し、多くの犠牲者を出しました。

空襲の状況

当時、徳島駅を14時47分に出発した牟岐行きの列車は、客車4両と貨車1両からなる編成でした。警戒警報の発令を受け、列車は阿波中島駅に一時停車しましたが、駅長の判断により16時頃に運転を再開しました。しかし、那賀川橋梁に差し掛かったところを、アメリカ軍のコルセア艦上機2機が襲撃しました。

爆撃と機銃掃射により、列車は脱線し大破しました。乗客は橋から川に飛び込んだり、鉄橋上を逃げ惑ったりしましたが、アメリカ軍機は容赦なく攻撃を加えました。若い女性車掌は、爆撃による破片が体に食い込み意識が朦朧とする中でも、「皆さん伏せて！」と叫び続けたといいます。車内は血肉が散乱し、まさに地獄絵図と化しました。

救護活動

空襲の連絡を受けた阿南共栄病院は、直ちに救護班を編成し、現場へ向かいました。国鉄の手配により蒸気機関車が用意され、外科看護婦7名が運転席に乗り込み、外科医師1名は機関車の先頭に掴まって現地へ急行しました。重傷者はトラックで阿南共栄病院へ、軽傷者は益崎医院へ搬送され、手当を受けました。

犠牲者

この空襲による死者は32名、負傷者は50名を超えました。犠牲者の多くは、銃創や爆傷、破傷風などを負っていました。亡くなった人々は近所の製材所の土場に安置され、その夜には西光寺で仮通夜が営まれました。

慰霊碑

空襲の悲劇を後世に伝えるため、2005年に住民団体によって現場近くの堤防下に「平和之碑」が建立されました。慰霊碑には、犠牲者の名前が刻まれ、平和への願いが込められています。

参考資料

阿南の那賀川鉄橋 空襲で惨劇 傷跡今も - 徳島新聞（2010年7月1日付）
阿南共栄病院30周年記念誌 『銀木犀』 1970年6月9日 ※現場に駆けつけた三沢銈介院長（当時）の「思い出」より。

関連項目

日本本土空襲
アメリカ合衆国の戦争犯罪
湯の花トンネル列車銃撃事件
大山口列車空襲
筑紫駅列車空襲事件
徳島大空襲

那賀川鉄橋空襲は、戦争の悲惨さを伝える出来事として、決して忘れてはならない教訓です。慰霊碑に手を合わせ、犠牲者の冥福を祈るとともに、平和の尊さを改めて認識する必要があります。

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