阿哲台

阿哲台：秋吉台に匹敵する広大なカルスト台地

岡山県新見市の中南部から真庭市南西部にかけて広がる阿哲台は、東西約18km、南北約12kmに及ぶ広大なカルスト台地です。その規模は、日本を代表するカルスト台地である秋吉台と肩を並べるほど大きく、独特の景観を呈しています。

阿哲台の成り立ちと地形

阿哲台の基盤は、阿哲石灰岩層群（秩父古生層）と三郡変成岩類（変成された秩父古生層）から成り、その厚さは推定1500mにも達します。このうち、石灰岩層の厚さは約600mと推定されています。台地全体の標高は約500～600mで、南北に流れる複数の河川によって、石蟹郷台、草間台、豊永台、唐松台の4つの台地が形成されています。特に草間台と豊永台は、狭義の阿哲台として認識されることが多いです。台地の名称は、かつてこの地域に存在した阿哲郡に由来しています。

阿哲台は、ほぼ全域が高梁川上流県立自然公園に指定されており、貴重な自然環境が保護されています。台地全体には、ドリーネと呼ばれるすり鉢状の窪地が多数点在し、独特の景観を創り出しています。また、地下には井倉洞、鬼女洞、満奇洞、羅生門など、大小合わせて約100もの鍾乳洞が存在し、地底の神秘的な世界を垣間見ることができます。

阿哲台と人々の暮らし

秋吉台と比較すると、阿哲台の特徴として、カルスト台地やドリーネなどの窪地にも、畑地や集落が点在している点が挙げられます。これは、阿哲台において人々が古くからこの地形と共存してきたことを示しています。また、人為的な山焼きが行われていないため、森林も比較的よく保存されています。

特に興味深いのは、かつて草間台にあった旧新見市立草間中学校の運動場です。この運動場は、ドリーネの中に造られた全国的にも珍しい事例であり、阿哲台における人々の生活とカルスト地形との密接な関係性を象徴的に示しています。現在、この場所は草間市民センター、草間公民館として利用されており、駐車場として活用されています。

阿哲台の構成台地

阿哲台は、4つの台地から構成されています。それぞれの台地には、特徴的な地形や鍾乳洞が存在します。

石蟹郷台: 阿哲台の最西部に位置し、高梁川の西側に広がります。鬼女洞や無明谷といった地形が見られます。
草間台: 阿哲台の中央部に位置し、井倉洞、羅生門、草間の間歇冷泉など、多くの鍾乳洞やカルスト地形が見られます。羅生門と草間の間歇冷泉は国の天然記念物に指定されています。絹掛の滝も見どころの一つです。
豊永台: 阿哲台の最東部に位置し、佐伏川、小坂部川、備中川に挟まれた広大な台地です。耕地や宅地は少なく、森林が広がっています。東部の一部は真庭市に属します。満奇洞や日咩坂鐘乳穴、宇山洞などの鍾乳洞があります。
唐松台: 阿哲台の最北部、新見市街地の東側に位置します。他の台地と比較してカルスト地形の発達は比較的少なく、隆起準平原に近い地形となっています。

交通アクセス

阿哲台は広範囲にわたるため、ここでは井倉洞へのアクセス方法を紹介します。

JR伯備線井倉駅より徒歩約15分
中国自動車道新見ICより車で約20分

その他の場所へのアクセス方法は、それぞれの項目を参照してください。

参考資料

* 光野千春・沼野忠之監修、野瀬重人編 『岡山県 地学のガイド - 岡山県の地質とそのおいたち』コロナ社、1980年

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