阿波しじら織

阿波しじら織は、徳島県徳島市で生産されている綿織物で、その独特な風合いが魅力です。徳島県の風土が生み出したこの織物は、とくしま市民遺産や経済産業大臣指定伝統的工芸品にも選ばれており、その歴史と技術は高く評価されています。

阿波しじら織の歴史

阿波しじら織のルーツは、慶応2年（1866年）にまで遡ります。当時、「たたえ織」と呼ばれていた木綿織物を、阿波国名東郡安宅村（現在の徳島市安宅）に住む海部ハナという女性が改良し、新たな織物として創案しました。彼女は、経糸の張力に差をつけることで、生地に独自のシボ（縮み）を出すという画期的な技術を生み出しました。このシボが、阿波しじら織の最大の特徴であり、肌触りの良さや清涼感を生み出す要因となっています。

昭和53年（1978年）には、阿波藍を使用した「阿波正藍しじら織」が、経済産業大臣指定伝統的工芸品に選定されました。阿波藍の美しい色合いと、しじら織の独特な風合いが組み合わさることで、より魅力的な織物として認められたのです。

平成22年（2010年）には、とくしま市民遺産にも選定され、地域文化を代表する遺産として、その価値が見直されています。

阿波しじら織の特徴

阿波しじら織の最大の特徴は、やはりそのシボにあります。経糸の張力差によって生まれる不規則なシボは、生地に独特の凹凸感を与え、肌との密着を防ぎます。そのため、汗をかいても肌にまとわりつきにくく、さらりとした着心地が持続します。特に、高温多湿な日本の夏には最適な素材と言えるでしょう。

また、阿波しじら織は、その製造過程においても、職人の手仕事による丁寧な作業が欠かせません。糸染め、織り、そして仕上げに至るまで、それぞれの工程で職人の技術と経験が活かされています。特に、阿波藍を使った阿波正藍しじら織は、天然染料である阿波藍を使用することで、深みのある美しい色合いと、環境に優しい製法を実現しています。

阿波しじら織に触れる

阿波しじら織に興味を持たれた方は、「阿波の藍染しじら館」を訪れるのがおすすめです。ここでは、しじら織の製造工程を見学できるほか、実際に製品に触れることもできます。また、藍染めの体験などもできるので、阿波しじら織の魅力をより深く知ることができるでしょう。

阿波しじら織は、日本の伝統的な技術と、徳島の豊かな自然が育んだ織物です。その独特な風合いと、快適な着心地を、ぜひ一度体験してみてください。

参考文献
『着物の織りと染めがわかる事典』（滝沢静江、2007年6月19日、日本実業出版社）

外部リンク
阿波正藍しじら織 阿波ナビ
* 徳島県伝統的特産品について 阿波ナビ

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