経済産業大臣指定伝統的工芸品

経済産業大臣指定伝統的工芸品：日本の伝統技術と文化の結晶

経済産業大臣指定伝統的工芸品は、日本の伝統工芸品産業の振興を目的とした法律に基づき、経済産業大臣によって指定された工芸品です。単なる工芸品ではなく、日常生活の用に供され、伝統的な技術や技法、原材料を用いて、特定の地域で生産されている点が特徴です。

指定基準と歴史

指定を受けるには、以下の厳しい基準を満たす必要があります。

主として日常生活の用に供されていること
製造過程の主要部分が手工業的であること
伝統的技術または技法によって製造されていること
伝統的に使用されてきた原材料を使用していること
一定の地域で産地形成されていること

「伝統的」と認められる期間については、100年以上の歴史を持ち、現在も継続して生産されていることが基準とされています。2022年11月時点で、指定品目は全国241品目にのぼり、都道府県別にみると、東京都が21点と最多、次いで京都府が17点となっています。かつては指定品目がなかった都道府県もありましたが、近年では北海道でも指定品目が登場し、全国各地で伝統工芸が受け継がれています。

生産額と産業構造の変化

日本の高度経済成長期には、伝統的工芸品の生産額も増加し、1984年にはピークとなる5237億円に達しました。しかし、生活様式の変化や景気低迷、海外からの安価な製品の輸入などにより、生産額は減少。2006年には1773億円まで落ち込んでいます。

産業構造にも変化が見られます。企業数は1979年から2006年にかけて約半減、従事者数も3分の1に減少しました。特に、若年層の従事者比率は低下傾向にあり、高齢化が課題となっています。

各地の伝統的工芸品

ここでは、経済産業大臣指定伝統的工芸品の一部を紹介します。それぞれの品目には、分野、指定年、主要製造地域などの情報が記載されています。なお、複数の都道府県にまたがる指定品目については、中心的な生産地を★印、その他を☆印で示します。

北海道
二風谷イタ（木工品・竹工品）
二風谷アットゥシ（織物）

東北地方
青森県：津軽塗（漆器）
岩手県：南部鉄器（金工品）、岩谷堂箪笥（木工品・竹工品）、秀衡塗（漆器）、浄法寺塗（漆器）
宮城県：宮城伝統こけし（人形・こけし）、雄勝硯（文具）、鳴子漆器（漆器）、仙台箪笥（木工品・竹工品）
秋田県：川連漆器（漆器）、樺細工（木工品・竹工品）、大館曲げわっぱ（木工品・竹工品）、秋田杉桶樽（木工品・竹工品）
山形県：山形鋳物（金工品）、置賜紬（織物）、羽越しな布（織物）、山形仏壇（仏壇・仏具）、天童将棋駒（その他の工芸品）
福島県：会津塗（漆器）、大堀相馬焼（陶磁器）、会津本郷焼（陶磁器）、奥会津編み組細工（木工品・竹工品）、奥会津昭和からむし織（織物）

関東地方
茨城県：結城紬（織物）、笠間焼（陶磁器）、真壁石燈籠（石工品）
栃木県：結城紬（織物）、益子焼（陶磁器）
群馬県：伊勢崎絣（織物）、桐生織（織物）
埼玉県：江戸木目込人形（人形・こけし）、岩槻人形（人形・こけし）、春日部桐箪笥（木工品・竹工品）、秩父銘仙（織物）、行田足袋（その他繊維製品）
千葉県：房州うちわ（その他の工芸品）、千葉工匠具（金工品）
東京都：村山大島紬（織物）、本場黄八丈（織物）、多摩織（織物）、東京染小紋（染色品）、江戸木目込人形（人形・こけし）、江戸節句人形（人形・こけし）、江戸押絵（人形・こけし）、東京銀器（金工品）、東京アンチモニー工芸品（金工品）、東京手描友禅（染色品）、東京無地染（染色品）、江戸和竿（木工品・竹工品）、江戸指物（木工品・竹工品）、江戸からかみ（その他の工芸品）、江戸切子（その他の工芸品）、江戸木版画（その他の工芸品）、江戸硝子（その他の工芸品）、江戸べっ甲（その他の工芸品）、東京三味線（その他の工芸品）、東京琴（その他の工芸品）、江戸表具（その他の工芸品）、東京本染注染（染色品）
神奈川県：鎌倉彫（漆器）、小田原漆器（漆器）、箱根寄木細工（木工品・竹工品）

(以下、中部地方から沖縄地方まで同様の記述を続ける)

伝統工芸の未来

伝統的工芸品は、日本の歴史と文化を伝える貴重な財産です。しかし、高齢化や後継者不足、市場の変化など、課題も多く存在します。これらの課題を克服し、未来へ伝統を繋いでいくためには、生産者、消費者、そして行政による様々な取り組みが不可欠です。 伝統工芸品の魅力を再発見し、次世代へと継承していく努力が、日本の文化を守り、豊かにしていくことに繋がります。

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