阿部光雄

阿部光雄：オートレース界のレジェンドとその軌跡

阿部光雄氏は、1949年生まれの新潟県出身の元オートレース選手である。川口オートレース場に所属し、6期生として長年に渡り活躍した。その名声は、息子であるオートバイロードレース界のスター、故阿部典史氏、そしてレーサーとして筑波ロードレース選手権に参戦する孫・阿部真生氏へと受け継がれている。まさにモータースポーツ一家と言えるだろう。

川口四天王と「雨光雄」

阿部氏は、川口オートレース場所属の広瀬登喜夫氏、且元滋紀氏、篠崎実氏と共に「川口四天王」と呼ばれ、その名を馳せた。特に雨天時における強さから「雨光雄」の異名も持ち、多くのファンを魅了した。

若き日の四天王は、それぞれが強いライバル意識を持って競い合っていたが、阿部氏は他のメンバーとも良好な関係を築いていたという。その温厚な人柄は、激しい競争の中で際立っていた。1980年には、地元川口で開催された第12回日本選手権オートレースで優勝。当時の唯一の特別競走（現在のSG）タイトルを獲得し、その実力を証明した。且元氏が優勝した翌年の日本選手権でも、阿部氏は連覇を目指して挑んだが、レース後には優勝した且元氏を心から祝福したというエピソードは、彼のスポーツマンシップの高さを物語っている。

青木治親氏への影響

阿部氏の温かさと思いやりは、後進の育成にも表れている。オートレース選手への転向を志した青木治親氏に対しては、スポンサー獲得に苦戦する青木氏をサポートし、転向を後押しした。当時、オートレース選手募集は2年に一度しかなく、年齢制限もあったため、青木氏にとって最後のチャンスであった。阿部氏のアドバイスとサポートは、青木氏のオートレース選手としての道を切り開く大きな力となった。青木氏のデビュー後も、阿部氏は良き先輩、良きライバルとして交流を続けた。

晩年と現役引退

還暦を間近に控えてもなお、川口の高速バンクで若手選手を凌駕する走りを披露するなど、衰え知らずの走りを見せた。2006年のSG第10回オートレースグランプリでは、特別選抜戦で1着を獲得するなど、その実力は衰えていなかった。雨天時の強さ、いわゆる「雨光雄」の面影は薄れていったものの、新たな走行方法を模索するなど、常に進化を追求し続けた。

2007年、悲劇が襲う。次男の阿部典史氏が交通事故により急逝。阿部氏は、その悲しみの中、GI第49回秋のスピード王決定戦への出場をキャンセルし、故郷へ戻った。その後、SG第39回日本選手権オートレースへ復帰。予選で3着という結果を残し、最後までレースに参加した。

現役時代には、息子である典史氏が使用していたのと同じデザインのヘルメットを着用していた。これは、阿部氏にとって、息子への想いを繋ぐ象徴でもあったと言えるだろう。2015年、集団引退を発表。地元川口で引退セレモニーが行われ、6期生全員の引退と共に、その長い選手生活に幕を閉じた。

監督としての活動

現役引退後も、モータースポーツ界への貢献は続いている。2010年には、典史氏が率いていた「Team Norick Jr.」を母体とした「Webike Team Norick Yamaha」の監督に就任。全日本ロードレース選手権などに参戦し、野左根航汰氏など、多くの有名ライダーを育成した。

選手データ

選手登録：1968年3月30日
身長：160.6cm
体重：58.9kg
血液型：A型
趣味：魚釣り
通算優勝回数：71回
グレードレース優勝回数（SG、GI、GII）：18回
全国区レース優勝回数、SG優勝回数：2回
GI優勝回数：10回
GII優勝回数：6回

エピソード

主に使用していた競走車の呼名は「シーチャス」。これは、典史氏がスペイン在住時に住んでいた街の名前と言われている。
ベックスエンジンに乗車した経験がある。その感想は「とてもじゃないが、乗れたもんじゃない」だったという。
川口オートの公式テーマソング『ぶっちぎりの青春』のバックコーラスに参加した。
2011年、典史氏が使用していたYZR500で、ヤマハグランプリ参戦50周年記念メモリアルランに参加。典史と同じデザインのヘルメットとライディングスーツを着用し、感動的な走りを披露した。

阿部光雄氏の生涯は、オートレース界に大きな足跡を残しただけでなく、家族や仲間との絆、そして後進育成への情熱を示す、感動的な物語と言えるだろう。

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