阿部肇一

阿部肇一：中国禅宗史研究の第一人者

阿部肇一（あべ ちょういち、1928年2月1日 - 2014年11月7日）は、日本の歴史学者であり、中国禅宗史研究の分野で卓越した業績を残しました。駒澤大学の学長、社会文化史学会の会長を歴任し、教育・研究の両面から日本の学術界に貢献しました。

生い立ちと学歴

1928年、阿部肇一は埼玉県大宮町（現在のさいたま市大宮区）で、普門院住職の長男として生を受けました。1944年に駒澤大学専門部地理歴史学科に入学し、歴史学を志しました。1947年3月に同大学専門部歴史地理科歴史学専攻を卒業。同期には、歴史家の芥川龍男、地理学の中島義一、陶芸家の井高帰山らがいました。その後も学問への探求心を燃やし続け、1947年4月に駒澤大学専門部地理専修科に入学、翌年修了。1948年には駒澤大学文学部人文学科に進みましたが、1950年に同大学を中退し、東京文理科大学歴史学科に転学しました。1953年、東京文理科大学大学院研究科に進学し、1958年に満期修了。駒澤大学歴史学科の助手として教鞭を執り始めました。

研究活動

阿部肇一の研究は、中国禅宗史、特に南宗禅成立以後の政治社会史的考察に焦点を当てたものでした。1961年には『東洋史上の禅宗の展開』で東京文理科大学賞を受賞。1967年には『中国禅宗史の研究』で東京教育大学より文学博士の学位を取得しました。彼の研究は、禅宗の歴史を政治、社会、文化といった多角的な視点から捉え、その展開を解明しようとするもので、禅宗史研究に新たな地平を切り開いたと評価されています。

大学における活動

1969年、阿部肇一は駒澤大学文学部歴史学科教授に就任し、後進の育成に尽力しました。1979年には文学部長、1981年には『駒沢大学百年史』編纂委員長を務め、大学の発展に貢献しました。1985年には駒澤大学副学長（財務担当）、1993年には学長（同理事）に就任。文部省学術審議会専門委員（科学研究分科部会、1987年-1989年）なども歴任し、大学運営や学術行政にも携わりました。1998年に駒澤大学を定年退職し、名誉教授となりました。

社会文化史学会会長として

1984年には社会文化史学会会長に就任し、学会の発展に貢献しました。社会文化史学会は、歴史学、社会学、文化人類学など、多様な分野の研究者が集まり、社会と文化の相互作用を研究する学会です。阿部肇一は、会長として学会を牽引し、学際的な研究の推進に努めました。

主な著書と論文

阿部肇一は、数多くの著書や論文を発表し、その研究成果を広く社会に発信しました。

著書

『中国禅宗史の研究 : 南宗禅成立以後の政治社会史的考察 』誠信書房　1963
『現代人の仏教』筑摩書房　1966
『禅の世界-公案-』筑摩書房　1980
『中国禅宗史の研究 - 政治社会史的考察 （増訂）』研文出版 1986.2
『禅宗社会と信仰 続中国禅宗史の研究』近代文藝社　1993.5

論文

『唐宋転換期における禅宗史の諸問題』1962
『龐蘊居士と唐代世相』印度學佛教學研究 14(1), 221-224, 1965
『横超慧日編著「法華思想」』1970
『元初臨済僧海雲寺印簡の活躍』1990.3
『「竹窗随筆」について』1995.4

晩年

2014年11月7日、急性肺炎のため永眠。享年86歳でした。阿部肇一の死は、日本の歴史学界にとって大きな損失であり、多くの人々に惜しまれました。

外部リンク

著書 - 国立国会図書館
CiNii Articles

阿部肇一は、中国禅宗史研究の分野で卓越した業績を残し、日本の学術界に多大な貢献をしました。彼の研究は、禅宗の歴史を政治、社会、文化といった多角的な視点から捉え、その展開を解明しようとするもので、禅宗史研究に新たな地平を切り開いたと評価されています。また、教育者としても多くの人材を育成し、日本の学術界の発展に貢献しました。彼の業績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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