降車ボタン

降車ボタンの役割と進化

降車ボタンは、ワンマン運転を行っている路線バスや路面電車の車両内に設置されており、乗客が降りたい場所で運転士にその意図を伝えるための重要な装置です。特に日本では、1950年代以降、ワンマン運転が導入された際に徐々に普及し始めました。最初は単純なスイッチで、押した際にランプが点灯しない仕様でしたが、その後の技術革新により、状況に応じて光るボタンが導入されるようになりました。

歴史的背景

日本での降車ボタンの始まりは、戦後の交通機関の合理化が進められた時期に遡ります。1963年には、王子ダイカスト工業（現・オージ）が日本初のランプ付きメモリーブザーを開発し、降車を知らせるための機能が強化されました。1970年代以降には、様々なバス機器メーカーがこのボタンを製造し、多様なデザインや機能が持たれるようになりました。しかしながら、2000年代以降は多くの国内メーカーが生産から撤退し、2023年時点で日本で自社開発・製造しているのはオージとレシップの2社だけとなっています。

規格の確立と国際化

1990年代までは、特に正式な規格が存在せず、各メーカーが独自のデザインを採用していましたが、2004年にバス関連団体がバリアフリーに配慮した降車ボタンの規格を策定したことにより、各メーカーはこの規格に従った製品開発を行うようになりました。近年、日本の降車ボタンは韓国や台湾など一部地域にも影響を与え、国際的に流通するようになりました。海外では一般的に押しても光らないボタンが多いですが、視覚障害者への配慮として光るボタンも徐々に増加しています。また、日本国内でも配線工事を行わずに設置できる無線式降車ボタンが普及しつつあります。

設置基準と位置

降車ボタンの設置については、2000年代に入ってガイドラインが策定され、位置や高さに関する明確な基準が設けられました。たとえば、縦手すりに設置する場合、床面から1400mmの高さに配置されることが明記されています。このような取り組みにより、新しく製造された車両には、利用者が押しやすく間違いにくい位置にボタンが設置されるようになっています。平均的な大型バスには、30個前後の降車ボタンが装備されています。

安全装置としての展開

2020年代に入ると、日本各地で子どもを置き去りにする事故が相次ぎ、政府がバスに安全装置の設置を義務付けることになりました。その一環として、降車ボタンを基にした無線式安全装置がオージとレシップから相次いで登場しました。これにより、降車ボタンは単に乗客が下車の意思を伝えるためのものから、より広範な安全対策の一部として重要性を増しています。

主なメーカーと市場の変化

市場において、降車ボタンを製造・販売している主なメーカーにはオージとレシップがあります。オージは日本国内市場の約70%を占めており、その後にレシップやゴールドキングなどが続いています。ただし、過去にはナイルス部品販売や大光電気、森尾電機なども市場に関与していました。最近では、他のメーカーも特定の機能を持たせた製品を供給する動きが見られます。

降車ボタンは、乗客の安全で快適な移動をサポートするために不可欠な装置であり、その重要性は今後もますます高まることでしょう。

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