陳摶

陳 摶（ちん たん）について

陳摶（872年 - 989年8月25日）は、中国史の五代十国から北宋にかけて活躍した道士であり、多くの人々に仙人として崇められる存在でした。彼の諱は図南で、自ら扶揺子を号するベテランの道士ですが、北宋の太宗からは希夷先生の称号を授かり、陳希夷（ちん きい）としても知られています。また、「睡仙」という異名も持ち、様々な占術、例えば紫微斗数、河洛理数、麻衣相法の創始者としての地位も築いています。

略歴

彼の生涯に関する記録は『宋史』の巻457に見られますが、信頼できる情報が乏しいのが実情です。『宋史』によれば、陳摶は亳州真源県（現在の河南省周口市鹿邑県）出身で、道教の聖地としても知られるこの地域には老子の出生地という伝説も存在します。また、別の書物『歴世真仙体道通鑑』には、普州崇龕県（現在の重慶市潼南区）出身とも記されていますが、これは隠棲先であった可能性が高いとされています。

彼は一度読んだ書物をすぐに暗記できる才能を持ち、後唐の長興年間に進士の試験にチャレンジしましたが、結果はふるわず、その後は官職を目指さず武当山に隠棲しました。後に華山の雲台観や少華山の石室へと移り住むこととなります。彼は日常の食事として酒を数杯のむだけで、生涯の大半を眠りに費やしたとされ、一度寝ると百日以上醒めなかったという記録もあります。

後周の世宗は、陳摶を宮中に招いて高い地位に登用しようとしましたが、彼はそれを固辞しました。また、北宋の太宗は彼に教えを乞いましたが、陳摶はその能力を謙遜し、教えることはできないと断りました。太宗からは「希夷先生」の称号が与えられ、多くの贈り物もありました。

988年には弟子に命じて華山の張超谷に石室を造らせ、翌年の7月、彼は自らの死の運命を告げる上表文を作成し、予告通りに逝去しました。享年は118歳という記録も残っています。

著作

陳摶は著名な道士であったため、その著作の多くは後世の作となっています。『宋史』芸文志によると「易龍図」と呼ばれる著書があったとされていますが、現存するのは序文『龍図序』のみです。また、南宋の朱震による記録では、彼が先天図を种放（ちゅうほう）に伝えたり、河図洛書を口伝で後の世代に伝授したとされています。

『風鑑』に関しては、観相術の書とされ、複数のタイトルで後世に伝えられています。また『指玄篇』も著作の一つですが、現存はしておらず、『周易参同契発揮』に引用されているだけです。これらの著作により、陳摶は道教や占術の発展に大きく貢献した人物として位置付けられています。

彼の名前は歴史の中で仙人的な存在として生き続け、多くの伝説や教えが今も人々に語り継がれています。

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