陸上自衛隊高等工科学校

概要

陸上自衛隊高等工科学校は、神奈川県横須賀市に所在する、防衛大臣直轄の教育機関です。中学校卒業予定者または卒業者で、15歳以上17歳未満の男子を対象に、将来、陸曹となるべき自衛官の育成を目的としています。高等学校ではありませんが、3年制で通信制高校と連携しており、高校卒業資格の取得が可能です。全寮制で、「自衛隊版の高校」と称されることもあります。略称は「高工校」です。

2010年（平成22年）3月26日に、旧陸上自衛隊少年工科学校から改編されました。施設の位置づけや所在地は旧校と変わりません。1学年あたりの生徒数は、2018年度まで約320名でしたが、翌年以降は約350名に増員されています。一方で、応募者数と受験倍率は減少傾向にあります。

入学には、中学校卒業後、採用試験に合格し、高等工科学校生徒に任命される必要があります。一条校ではないため、生徒は通信制高校である神奈川県立横浜修悠館高等学校と技能提携し、高校卒業資格を得ます。学費や寮費は無償で、生徒には所定の給与が支給されます。

原則として、卒業後の4月1日に陸上自衛官となり、陸士長の階級が与えられます。約1年間の教育後、3等陸曹に昇任します。在校中の身分は自衛官ではなく、防衛大学校本科学生と同様の「特別職国家公務員」です。

生徒制度の改編にあたり、募集を停止しなかったため、当初は旧制度の生徒と新制度の生徒が混在していました。旧生徒の身分は自衛官でした。

本校は、少年期から専門的な軍事教育を施し、卒業後には曹として自衛隊の業務に就き、また、多くの卒業生が幹部候補生制度を通じて幹部を目指す点で、旧陸軍の少年飛行兵学校などに類似しています。ただし、陸軍幼年学校は将校候補生を養成する学校であり、曹候補生を養成する本校とは教育の位置づけが異なります。しかし、制服や「模範生徒」制度には幼年学校の影響が見られます。

2022年12月に閣議決定された防衛力整備計画では、自衛隊の人的基盤強化の一環として、本校の共同化と男女共学化が示されました。2023年3月の国会答弁では、これらの施策が2028年度から開始されることが明らかにされました。

教育内容

教育内容は、一般の普通科高校に相当する「一般教育」、専門分野を教育する「専門教育」、自衛官としての基礎を築く「防衛基礎学」の3つに分かれており、それぞれの専門教官が授業を行います。

一般教育

学習指導要領に準拠した内容で、普通科高校と同様のカリキュラムで教育を行います。この一般教育とレポート作成などの通信制教育により、生徒は本校卒業と同時に横浜修悠館高等学校の卒業資格を得ます。3学年では、選択科目によって「教養」「理数」「国際」「システム・サイバー」の4つの専修コースに分かれます。「システム・サイバー」は、サイバー防衛の専門家を育成するために、2021年度に設けられたコースです。また、2023年度からは、新たに「AI・ロボティクス」の専修コースが設けられます。

専門教育

現在の陸上自衛隊で使用される高度に高機能化・システム化された装備品の能力を最大限に発揮させるための基礎を養います。内容は、「電子機械（メカトロ）工学」「情報工学」「ロボット制作などを通じた教育」に大別されます。

防衛基礎学

陸上自衛官として必要な基礎的事項を学びます。法令などを学ぶ「服務及び防衛教養」と、野外での基礎的な行動を学ぶ「戦闘及び戦技訓練」に分かれます。射撃訓練と戦闘訓練は2学年と3学年で行われます。

学生生活

授業は、原則として平日は7時間、水曜日は8時間、金曜日は6時間です。週休2日制で、外出は原則として休日のみ、定められた時間と範囲内で許可されます。休日の外泊は許可されていません。携帯電話は、1学年の冬休み明けから所持できますが、生活態度によっては遅れたり、禁止されることがあります。

クラブ活動では、体育クラブは横浜修悠館高校の名義で対外試合に参加し、軟式野球部の全国大会優勝（2013年）や剣道部の定通制全国大会25連覇（1990年-2014年）などの実績があります。各生徒は、ドリル部、吹奏楽部、和太鼓部、サイバー・コンピュータ部のいずれかの特定クラブか、体育クラブと文化クラブの両方に所属する必要があります。ただし、2学年からは文化クラブを続けるかどうか選択できます。2022年からは、新たにeスポーツ部が文化クラブに加わりました。

教育理念・校風・制服

教育理念

「技術的識能を有し、知徳体を兼ね備えた伸展性ある陸上自衛官としてふさわしい人材を育成する」

校風

「明朗濶達・質実剛健・科学精神」

制服

詰め襟の短ジャケット型の制服に一新されました。旧陸上自衛隊91式制服にあった赤ラインが復活し、伝統を継承しています。生徒の服制の詳細は、自衛隊法施行規則に基づきます。冬服は濃灰色でえんじ色の飾線が入った二つポケット、前面ファスナー留めの詰め襟短ジャケットの上下で、ズボンはサスペンダーを使用します。夏服は、1種上衣が冬服と同様、2種上衣は白のスタンドカラーで襟にえんじ色の飾線が入ったシャツです。帽章は、飛桜馬と若葉を組み合わせた独自のデザインです。制服着用時の靴下は黒で、それ以外は白です。制服には、襟首やシャツのポケットの上に、それぞれの学年を示す金属製のバッジ（学年識別章）をつけます。1学年は黒下地に銀色の線が横に2本、2学年は銀色の線の間に銀色の桜が1つ、3学年は桜が2つです。

組織編成

企画室
総務部
総務課
管理課
教育部
教務課
主任教諭（1人）
第1教官室（一般教育担当）
第2教官室（専門教育担当）
生徒隊（防衛基礎学担当）
第1教育隊（第1学年）
第2教育隊（第2学年）
第3教育隊（第3学年）

主要幹部

（情報は割愛します）

陸上自衛隊生徒出身の著名人

陸上自衛隊生徒を参照してください。

脚注

注釈・出典については割愛します。

関連項目

陸上自衛隊生徒
高等工科学校生徒
海上[[自衛隊]]生徒及び航空自衛隊生徒
防衛不祥事

外部リンク

高等工科学校（公式ページ）
陸上自衛隊 高等工科学校 (@JGSDF_HTS_pr) - X（旧Twitter）
陸上自衛隊高等工科学校組織規則（平成22年陸上自衛隊訓令第11号）（防衛省・防衛施設庁情報検索サービス）
高等工科学校生徒（防衛省公式ページ）
高等工科学校 第60期生徒 着校・入校式[桜H26/4/23] - YouTube
動画でわかる！高等工科学校生徒の一日 - YouTube
高等工科学校 平成24年春・第58期生徒、第１教育隊の一日[桜H24/7/27] - YouTube
* 陸上自衛隊高等工科学校の生徒の服装に関する訓令

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