陸軍始

陸軍始（りくぐんはじめ）とは

陸軍始とは、毎年1月8日に旧大日本帝国陸軍が行っていた仕事始めの儀式です。この儀式は、単なる業務開始の合図ではなく、軍全体の士気を高め、国家の安泰を祈願する重要な意味合いを持っていました。

起源と変遷

陸軍始の起源は、1870年（明治3年）1月17日に遡ります。この日、明治天皇が旧江戸城本丸跡において、国家の隆盛と武運長久を祈って神を祀ったことが始まりとされています。当初は「軍神祭」という名称で、宗教的な色彩が強いものでした。その後、「陸軍始」と改称され、同じく1月9日に行われる「海軍始」とともに、軍の重要な年中行事として定着しました。

儀式の様子

陸軍始では、東京の代々木練兵場において、天皇陛下臨席のもとで盛大な観兵式が挙行されました。全国各地の師団でも同様に閲兵式が行われ、歩兵連隊、騎馬部隊、戦車隊、航空機などが参加し、その様子は非常に華やかでした。これらの儀式は、軍の威容を示すとともに、国民の愛国心を鼓舞する役割も担っていました。

戦時下での陸軍始

陸軍始の伝統は、太平洋戦争中も維持されました。1945年（昭和20年）1月には、米軍の空襲が激化する状況下でありながら、昭和天皇臨席のもと、皇居前広場にて観兵式が実施されました。この事実は、戦時下においても、陸軍がその伝統を重んじ、士気を維持しようとしたことを示しています。

陸軍始の意義

陸軍始は、単なる軍の行事にとどまらず、国家の象徴としての役割も果たしていました。それは、軍の士気を高め、国民の愛国心を醸成し、国家の安泰を祈るという、重要な目的を持っていたと言えるでしょう。陸軍始は、旧日本軍の歴史を語る上で、欠かせない重要な要素の一つです。

参考資料

* 『完本 日本軍隊用語集』（寺田近雄／学研 2011年） ISBN 978-4-05-404790-7 C0021

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