陽イオン交換容量

陽イオン交換容量（CEC）とは？

陽イオン交換容量（Cation Exchange Capacity、CEC）とは、土壌が保持できる陽イオンの総量を示す指標です。土壌中には、粘土鉱物や腐植などの負に帯電した粒子があり、これらがプラスの電荷を持つ陽イオンを引き付けて保持します。この保持能力の大きさをCECで表し、単位はcmol(+)・kg⁻¹を用います。かつてはmeq/100gが使われていましたが、現在は国際単位系(SI)に則ったcmol(+)・kg⁻¹が標準となっています。

CECは土壌の肥沃度を評価する上で非常に重要な指標です。なぜなら、植物に必要な養分であるカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの陽イオンは、土壌に吸着された状態で存在し、植物は根からこれらの陽イオンを吸収するためです。CECが高い土壌は、より多くの陽イオンを保持できるため、植物への養分供給能力が高く、結果として肥沃な土壌となります。逆にCECが低い土壌は、養分保持能力が低く、植物の生育に悪影響を及ぼす可能性があります。

CECと土壌の種類

様々な土壌のCEC値は大きく異なります。一般的に、粘土鉱物や腐植が多く含まれる土壌ほどCECが高くなります。以下に、いくつかの土壌の種類とその典型的なCEC値を示します。これらの値はあくまで目安であり、土壌の種類や条件によって変動します。

砂丘未熟土: 数cmol(+)・kg⁻¹程度。砂粒が多く、粘土鉱物や腐植が少ないため、CECは非常に低くなります。養分保持能力が低く、植物の生育には適さない土壌です。
灰色低地土: 10～20cmol(+)・kg⁻¹程度。粘土鉱物が比較的多く含まれ、CECは砂丘未熟土より高くなります。水田として利用されることが多い土壌です。
黒ボク土: 20～50cmol(+)・kg⁻¹程度。腐植が多く含まれるため、CECが高く、非常に肥沃な土壌です。農業に適した土壌として知られています。
褐色森林土: 20cmol(+)・kg⁻¹程度。CECは比較的高いですが、黒ボク土ほどではありません。森林の土壌として広く分布しています。
* ラテライト: 数cmol(+)・kg⁻¹以下。粘土鉱物が風化してケイ素分が溶脱した土壌で、CECは非常に低いです。養分が少なく、植物の生育には不向きです。

CECと石灰施用

石灰は、土壌のpH（水素イオン指数）を上げるために施用されます。酸性土壌を改良し、植物の生育を促進する効果があります。しかし、CECの値によって石灰の施用量は大きく異なります。

CECが高い土壌では、土壌が多くの陽イオンを保持できるため、石灰によってpHを上げるには大量の石灰を施用する必要があります。一方、CECが低い土壌では、少量の石灰でもpHが大きく上昇するため、過剰な石灰施用は避ける必要があります。石灰の施用量を適切に調整するためには、土壌のCEC値を把握することが重要です。

まとめ

陽イオン交換容量（CEC）は、土壌の肥沃度を評価する上で重要な指標です。CECが高い土壌は養分保持能力が高く、植物の生育に適しています。一方、CECが低い土壌は養分保持能力が低く、植物の生育が阻害される可能性があります。土壌改良や施肥管理を行う際には、CECの値を考慮することが重要です。また、石灰施用においてもCECは重要な要素であり、CEC値に応じて適切な施用量を決定する必要があります。

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