隔岸観火

隔岸観火（かくがんかんか）

隔岸観火は、兵法三十六計の第九計に数えられる戦術であり、敵の内部に問題や混乱が生じた際に、直接的な攻撃を避け、状況の悪化と自滅を待つ戦略を指します。

本文の解釈

「陽乖序乱、陰以待逆。暴戻恣睢、其勢自斃。順以動豫、豫順以動。」

これは、敵の内部で離反や秩序の乱れが生じた場合、軽率に動かず、事態の推移を静観することを意味します。敵が暴政や横暴を重ねるならば、その勢いは自ずと衰え、内部崩壊を招きます。状況に順応し、慎重に備えをすることで、有利な状況を作り出すことができます。

按語・事例

敵の秩序が乱れている場合、無理に攻め込まず、敵の自滅を待ちます。こちらが動かなければ、敵は団結する理由を失い、内紛の火種が拡大します。この戦術は、敵の内部崩壊を誘う火攻めの極意とも言えます。

三国志の例

袁尚、袁煕が曹操に敗れ、公孫康のもとに逃れた際、曹操は追撃を控えて状況を静観しました。予想通り、公孫康は袁尚、袁煕を斬り、その首を曹操に送りました。これは、曹操が敵を追い詰めずに放置することで、彼らが互いに疑心暗鬼になり、自滅することを予見していたからです。

春秋時代の例

晋の宰相趙盾は、宋、衛、陳とともに晋から離反した鄭を攻めました。楚の大臣鬬椒が鄭を救援するために現れましたが、趙盾は鬬椒の勢いを警戒し、あえて兵を退きました。その後、鬬椒は内乱を起こし、鎮圧されました。これにより、楚は二人の優れた武将を失い、国力を弱めることになりました。

荘王は、後年、国事に優れた意見を出す者がいないことを嘆き、楚の将来を憂いました。荘王の死後、楚は天下の覇権を晋に奪われることになります。

隔岸観火の教訓

隔岸観火は、敵の弱点を冷静に見極め、最小限のリスクで勝利を得るための戦略です。敵の内部に問題がある場合、焦って攻撃するのではなく、状況を見極め、敵が自滅するのを待つことが重要です。この戦術は、孫子の「火攻篇」の趣旨とも共通し、敵の内部崩壊を誘い、有利な状況を作り出すことを目的としています。

出典は『呉子』にあります。

敵が自滅するのを待つことで、自軍の損害を最小限に抑えつつ、最終的な勝利を手にすることができるのです。

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