隼型試作戦闘機

隼型試作戦闘機について

隼型試作戦闘機（はやぶさがたしさくせんとうき）は、三菱航空機によって大日本帝国陸軍向けに試作された戦闘機です。その社内符号は「1MF2」とされています。

開発の背景

陸軍は1927年（昭和2年）に、旧式の甲式四型戦闘機の代替となる新しい戦闘機の開発を各航空機メーカーに指示しました。三菱航空機は、アレクサンダー・バウマン博士の指導のもと、仲田信四郎技師が主導となり設計を開始しました。この作業には、後に有名な設計者となる堀越二郎技師も加わっています。

試作一号機は1928年（昭和3年）5月に完成し、各務原飛行場で三菱側の試験が無事に終わった後、6月13日に所沢で陸軍による評価が行われました。その際には、中島のNCや川崎のKDA-3を凌駕する素晴らしい性能を発揮しました。

事故と試験の中断

しかし、試験中の高度4,000メートルからの急降下試験で、機体は空中分解を起こし墜落しました。テストパイロットであった中尾純利操縦士は無事に落下傘で脱出しましたが、この事故は陸軍が試験を中断する原因となりました。その後の強度試験の結果、同機は全社不採用となったのです。事故の原因としては、補助翼の取り付けに関する設計ミスやフラッターの発生が推測されています。

機体の仕様

隼型試作戦闘機は木と金属を組み合わせた構造を持ち、合板と羽布が張られた単葉機です。当初は「隼一型」として主翼を前進翼にする計画でしたが、陸軍の要望に応じて「隼二型」に変更され、パラソル翼が採用されました。この特異な設計により、良好な前下方視界を実現しています。試作機は2機制作され、2号機は強度試験に用いられました。

降着装置は固定式で、フロートに換装することで水上機としての運用も視野に入れた設計となっていました。主翼の支えには張線を廃止し、空中火災時に燃料を投棄できる投下式燃料タンクも採用されるなど、当時の最新技術が取り入れられています。

最終的には、改良を重ねた中島のNCが九一式戦闘機として公式に採用され、隼型は試作に終わることとなりました。以下に、隼型試作戦闘機の基本諸元を示します。

基本諸元

• - 全長: 8.20 m
• - 全幅: 12.62 m
• - 全高: 3.35 m
• - 主翼面積: 23.0 m²
• - 自重: 1,265 kg
• - 全備重量: 1,800 kg
• - エンジン: 三菱 イスパノ・スイザ 水冷V型12気筒（最大600 hp） × 1
• - 最大速度: 270 km/h
• - 実用上昇限度: 8,500 m
• - 武装: 7.7 mm固定機関銃 × 2
• - 乗員: 1名

参考文献

• - 野沢正『日本航空機総集 三菱篇』出版協同社、1961年
• - 松岡久光『みつびし飛行機物語』アテネ書房、1993年
• - 歴史群像編集部 編『決定版 日本の陸軍機』学研パブリッシング、2011年

隼型試作戦闘機の試験飛行は、宮崎駿の漫画と映画『風立ちぬ』にも描かれており、多くの人々の関心を引いています。

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