雁部貞夫

雁部貞夫: 日本の歌人と登山家

雁部貞夫（かりべ さだお）は、1938年12月16日に東京向島で誕生し、日本における歌人としての名声と共に登山家としても広く知られています。彼は早稲田大学の教育学部を卒業し、その後東京都立高校の教諭として教育現場に身を置いていました。

登山の道へ

1966年、雁部はヒンドゥ・クシュ主稜をパキスタン側から登った日本人初の登山者となり、サラグラール峰山群とブニ・ゾムに試登しました。この活動は彼の登山家としてのキャリアの出発点となりました。さらに1968年の夏には、未踏峰であるヒンドゥ・ラジ山脈の最高峰コヨ・ゾムに試登し、イシュペル・ドームおよびフラッテロ・ゾムにも初めて足を踏み入れました。

その後、彼はこの山域を十数回にわたり探査し、近年ではヤルフーン河原流域を中心に活発な研究を行ってきました。1997年および2003年には、ヒンドゥ・クシュ山系の最大の氷河であるチアンタール氷河を縦断し、これまで未踏の六千メートル峰を多数撮影し貴重な資料を集めました。

文学の世界

学生の頃から、雁部は宮地伸一の影響を受け、『アララギ』の会員として歌を作り続けました。1997年にその「アララギ」が終刊した後、彼は吉村睦人と共に「新アララギ」を創刊し、編集委員や選者として関わりました。2011年には歌集『ゼウスの左足』で第13回島木赤彦文学賞を受賞し、2013年度には日本歌人クラブの大賞選考委員としても活動しました。

主な著書

彼の著書には、登山や氷河に関する研究が多く含まれています。2005年には『岳書縦走』を、同じく2005年に『氷河小吟 雁部貞夫歌集』を出版しました。さらに、2008年には『山のひと山の本 岳人岳書録』、2009年には『秘境ヒンドゥ・クシュの山と人 パキスタン北西辺境を探る』を世に送り出しました。

2010年に発表した歌集『ゼウスの左足』は前述の通り、島木赤彦文学賞を受賞し、その後2012年には『雁部貞夫歌集』、2015年には『韮菁集をたどる 大陸の文明と楸邨』が出版されるなど、多彩な著作を持つ作家でもあります。

編集や翻訳活動

また、雁部は編著や翻訳にも力を入れており、1994年に諏訪多栄蔵の『ヒマラヤ山河誌』を共編、さらには1996年に『ヒマラヤ名峰事典』を刊行しました。翻訳活動としては、レジナルド・C.F.ショーンバーグ著の『ヒマラヤ《人と辺境》』や『ヘディン探検紀行全集』など、多数の作品を手掛けています。

登山と文学の融合

雁部貞夫は、登山と文学を通じて日本の文化に多大な影響を与えた人物であり、その功績は今なお多くの人々に敬愛されています。彼の作品や業績は、次世代の登山者や歌人たちへのインスピレーションとなることでしょう。

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