雍州府志

雍州府志について

『雍州府志』（ようしゅうふし）は、山城国、つまり現在の京都府南部に焦点を当てた初の包括的かつ体系的な地誌です。この地図は、歴史家である黒川道祐によって、1682年から1686年の約4年間にわたり執筆され、全10巻から構成されています。

黒川道祐とその背景

黒川道祐は、広島県安芸国出身の医者でしたが、後に京都で儒学者の林羅山に学び、歴史家としての道を歩み始めました。彼は、山城国を中国の古代の地方名である「雍州」に例えて、地理、歴史、風俗行事、社寺、産物、遺跡、古墳など多岐にわたるテーマで文章を組み立てています。道祐の文章は、現地調査に基づいており、彼自身の観察や体験を基にしています。

構成と内容

『雍州府志』は、8つの郡に分けて各地域の詳細を漢文で記述しており、その構成は明確です。各郡にある神社や寺院、産物、文化行事の紹介などが含まれ、地元の風俗や自然環境に関する情報が豊富に盛り込まれています。このような体系的なアプローチによって、読者は山城国の全体像を理解しやすくなっています。実際、この作品は中国の大明時代の地誌『大明一統志』になぞらえて作成されたため、古代中国の地理の観念が色濃く反映されています。

意義と影響

『雍州府志』は、山城国や京都に関する重要な歴史的資料として今も高く評価されています。黒川道祐の地誌は、当時の社会や文化、経済状況を映し出しており、後の研究者にとっても貴重な情報源となっています。特に、地域史や文化的な背景の研究において必須の文献とされています。

関連文献

この地誌に関連する書籍として、いくつかの重要な作品が刊行されています。例えば、黒川道祐による『雍州府志　近世京都案内』は岩波文庫より出版されており、校訂者の宗政五十緒が上巻を刊行した後に急逝し、下巻の刊行はなされていません。また、立川美彦の『訓読雍州府志』や、彼と国文学研究資料館による『京都学の古典「雍州府志」』もまた、黒川道祐の作品を広めるための重要な資料です。さらに、野間光辰の『雍州府志』も出版され、地誌の理解を深める助けとなっています。

アクセスと保存

『雍州府志』の原本は、立命館大学図書館の西園寺文庫に所蔵されており、古典籍閲覧データベースを通じてウェブ上でも閲覧可能です。このように、現代においてもその知識や情報が保存され、多くの人々に学びの機会を提供しています。

このように『雍州府志』は、単なる地誌を超え、地域の歴史や文化を学ぶ上で貴重な資源となっているのです。

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