黒川道祐

黒川道祐：医術と歴史を究めた多才な人物

黒川道祐（くろかわ どうゆう）は、元和9年（1623年）に生まれ、元禄4年（1691年）に没した江戸時代初期の医師であり、歴史家です。字は玄逸、号は静庵、梅庵、遠碧軒などと称しました。彼の足跡は、医学、歴史、文芸と多岐にわたり、その多才ぶりは多くの著作に結実しています。

黒川家の出自

黒川家の先祖は、平安時代の武将・藤原秀郷に遡るとされています。秀郷は、平将門討伐の功績により下野守に任ぜられた豪族で、「俵藤太」としても知られています。その後、一族は近江国甲賀郡土田町黒川に移り住み、黒川姓を名乗ったとされています。黒川家は、甲賀五三家の一つである北山九家に属し、由緒ある家柄でした。

生涯と業績

道祐は、父である黒川光信（寿閑）から医術を、外祖父の堀杏庵と林羅山・林鵞峰父子からは儒学を学びました。父の跡を継ぎ、広島藩に儒医として仕えましたが、京都での著述活動に専念するため、寛文12年（1672年）に藩医を辞職しました。

道祐の代表的な業績として、医学史書『本朝医考』が挙げられます。これは、日本初の医学史書として、各医家の出処や業績を詳細に記述した画期的なものでした。その他にも、山城国の地誌『雍州府志』、京都の年中行事を解説した歳時記『日次紀事』など、幅広い分野で著作を残しました。また、近畿一円を旅して多くの旅行記を執筆し、それらは『武陵随筆』『遠碧軒聞見随筆』『遠碧軒随筆』『遠碧軒雑記』としてまとめられました。

美術史への貢献

道祐は、美術史にも関心を持ち、狩野永納とも親交がありました。永納の『本朝画伝』成立に尽力し、序文を林鵞峰に依頼するなど、惜しみない援助を行いました。また、道祐の著作には、福富立意という人物から聞いた話として、大坂の陣前後に活躍した画家、狩野三甫、浮世又兵衛、後藤左兵衛に関する記述があります。特に、浮世又兵衛を岩佐又兵衛と特定する上で重要な情報を提供したことは、美術史研究において特筆されるべき功績です。

交友関係と家族

道祐は、本草家の貝原益軒とも親交がありました。また、黒川家は代々医者や学者を輩出しており、その子孫には、アメリカ留学を経て外交官となった黒川友敬や、実業家として活躍した黒川道見などがいます。黒川家は、江戸時代から現代に至るまで、日本の社会に貢献する多くの人材を輩出してきた名家と言えるでしょう。

著作一覧

『本朝医考』
『雍州府志』
『日次紀事』
『芸備国郡志』
『遠碧軒随筆』
『近畿游覧誌稿』

道祐は、元禄4年（1691年）に68歳で亡くなり、京都の本隆寺に葬られました。その多岐にわたる業績は、後世に大きな影響を与え、今もなお研究され続けています。

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