雑戸

雑戸（ざっこ）についての考察

雑戸とは、日本の律令制度において特定の官庁に従属していた手工業を中心にした技術専門の集団です。その起源は朝鮮半島からの渡来人技術者に端を発していると考えられています。大化の改新後には、部民制度の再編によって形成され、主に朝廷に対して軍事的な技術面で奉仕しました。

この用語は唐の律令制度に見られる同名の制度に由来しますが、雑戸は唐の賎民とは異なり、賎民身分には分類されていません。しかし、一般の戸籍に含まれない特異な戸籍「雑戸籍」を持ち、彼らの身分は技術と共に世襲され、特定の官司に特化していました。そのため、賎民に準じた扱いを受けることが多かったのです。ただし、功績により位階を賜る者も存在しました。

雑戸の構成

律令制度下で確認される雑戸にはいくつかの種類がありました。たとえば、百済手部や百済戸、雑工戸、鍛戸、飼戸/馬甘などがあり、それぞれ特定の官庁に従属していました。このような雑戸は、都に近い近畿地方及びその周辺に居住し、様々な勤務形態で活動していました。例えば、百済手部や百済戸は一定期間ごとに交代で働く形態を持ち、雑工戸や鍛戸は農閑期に労役として従事しました。筥戸のように、毎年所定の製品を納める形を取る者もいました。

雑戸は調や雑徭の課役の一部が免除され、兵役においても免除されていましたが、他の品部と比べると重労働を強いられていたと考えられています。

雑戸の解放と変遷

律令制度の進展によって、次第に賎民身分の削減が行われ、雑戸から公民への編入が増えていきました。744年の天平16年には馬飼雑戸が全面的に解放され、雑戸の技術者たちには一般的な姓への改名が命じられました。この動きは、大仏建立において雑戸の技術力を利用するためのものであったとも言われ、名目上の解放との見方も存在しますが、実際には彼らを再び官司に従事させることを目的としたものでした。

752年には、旧雑戸籍の調査が行われ、解放前の雑戸が再び職務に従事するよう命じられました。しかし、これは単に旧雑戸籍の解放が一時的なものに終わったことを示しています。旧雑戸の人々は身分が戻されたわけではなく、実際には課役として官司に奉仕することが求められました。そのため、雑戸制度の実質はその後も維持されていくこととなります。

雑戸の影響と現在

『延喜式』においては、雑戸についての規定が見られることから、彼らが制度内でどのように位置づけられていたかが示されています。戦後の一部では雑戸を中世の賎民の源流とする考えも存在しましたが、それは成立し難いとされることが多いです。結局、雑戸制度は天平16年の解放以降、実質的には廃止され、名目上の存在として続いていったのではないかと考えられています。

このように、雑戸は日本の古代社会における重要な職業部の一つであり、その技術や制度は後の時代に大きな影響を与えました。

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